118 / 134
バレンタイン
今俺は圭ちゃんの家でひとり、デジカメに収まっている写真を眺めている。
この家の主は今夜はライブで留守。
そう……
バレンタインライブだから俺は留守番。
昨年はいつものように俺も一緒にライブハウスに行ったんだ。でもダメだあれは……
いつものライブより女のファンが多くて、みんなプレゼントとチョコを渡そうと大混雑。
居心地悪いったらなくて、圭ちゃんもあんまり乗り気じゃなさそうだったから今年は俺は遠慮した。
「そろそろかな……?」
もうじき帰ってくるであろう圭ちゃんのために、俺は手作りのティラミスを冷蔵庫から取り出し、テーブルに置く。
傍には花も飾ってある。
今日はバレンタインだからね。
俺だってこういうの作れるんだよ。
飾り付けたそのテーブルも何となく記念に写真に収めた。
しばらくそのテーブルを眺め、俺はまたソファへと戻る。手にしたデジカメには圭ちゃんとの思い出がたくさん詰まっていた。
一番最新の写真は、正月に行った温泉旅行での圭ちゃんと俺。二人でふざけ合ってる写真や、美味かった料理の写真……
頬っぺたをくっつけ合って、 大笑いしている二人。
「二人とも、凄えいい顔……」
思わず呟く。
「……なのに何でこんなに辛いんだろうな」
俺は画面の中から笑いかける圭ちゃんを指先で軽く小突いた。
「ただいま。陽介また寝ちゃってんの?」
俺はソファで寝てしまったらしく、圭ちゃんのキスで目が覚めた。圭ちゃん王子様かよ……
「お帰り……テーブル見た?」
俺のことを覗き込む圭ちゃんの首元にしがみつきながら少しわくわくしながらそう聞いた。いつもは作ってもらってばっかだもん。圭ちゃんびっくりしてくれたかな?
「うん! 凄いね! あれ陽介が作ったの? バレンタインだから?」
「そう、いつも作ってもらってばかりでしょ? たまには俺も…… っ! 」
言い終わらないうちに圭ちゃんに唇を塞がれた。
「嬉しい。凄い嬉しいよ……陽介こういうの苦手なくせに、ふふ……凄く上手。ありがとう陽介……大好き」
喜んで圭ちゃんは俺の作ったティラミスを食べ、俺は某有名店のチョコレートを貰って食べた。
甘い甘いバレンタイン──
眠りにつく前、気づかれないよう俺のデジカメを圭ちゃんの棚の引き出しにそっとしまった。
この思い出達は圭ちゃんが持っててね……
ともだちにシェアしよう!