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前日

明日はいよいよ卒業式だ── 圭ちゃんの学校も同じく明日が卒業式。 さっきからぐるぐるぐるぐる…… こういうのを走馬灯のように……って言うのかな。 圭ちゃんを初めて見た時のドキドキから、初めて告白した時の事。二度目の告白、思いが伝わって付き合う事になった時の事。合鍵を貰った時、初めて圭ちゃんの家に泊まった時の事…… 初めて喧嘩した時の事…… 全てがついこの間のように思い出される。 眠れそうになくてぼんやりと思い出に浸っていると、康介が部屋に来た。 部屋に入ってくるなり、どうにも様子がおかしいことに気がついた。 すぐにピンときて、俺はなんだか居心地が悪くなった。 なんでお前まで感傷的になってんだよ。 「なんだよ、もう寝ようと思ってたのに……」 俺はわざと突き放した言い方をする。 「ごめん。少し兄貴と話したいなって思って」 そう言った康介は、俺に向かって「ありがとう」と感謝の言葉を呟いた。 ……こういうのは苦手だ。 「はぁ? なんだよ、康介……小遣いピンチか?」 しんみりしないでいつものおバカなキャラの康介に戻ってくれよ。 「ちげえよ。ほんと、ありがとう……卒業……おめでとう」 俺が誤魔化そうとしても、康介は今日はノッてこなかった。 いつになく真剣だし、おまけに泣きそうな顔をしている。 「ははっ、ありがとな。卒業したって生活は変わらねぇのに……まぁ、しばらくしたら家出て独り暮らしはするけどさ……なんでお前が泣きそうになってんだよ。どうした?」 「だってさ……生活、変わるだろ? 俺は変わらないけど… 兄貴は変わるだろ? 圭さんと離れるの、寂しいだろ? ……俺……俺、頼りない弟だけどさ、愚痴くらい聞けるから……少しは頼れよな!」 康介には圭ちゃんのことは話してなかったけど、誰かしらに聞いたんだろう…… ……悪いことしたな。 きっとずっと俺のことを心配してくれてたんだろうな。 「でもさ……大丈夫だよ。兄貴たち、そこら辺のカップルなんかより全然絆が強いだろ? 遠距離だって何も心配ねぇよ! な? 大丈夫! 弟の俺が保証する!」 「………… 」 そっか。別れる……って事までは知らないのか。 またここで本当のことを話したところで色々言われるのが目に見えてるから黙っておくことにした。 どうせまた誰かから聞くだろう。 「……康介、ありがとな……俺もう寝るわ」 ひとりになりたくてそう言うと、満足そうな顔をして康介は部屋から出て行った。 大丈夫だ。 お前に心配されなくても、俺たちは大丈夫…… ありがとな、康介。

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