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未練
食事を終え、ソファで二人寛ぐ。
その後順番に風呂に入り、先に済ませた俺は自分のベッドに腰掛け陽介を待った。
ここで一緒に眠ったらもうお別れ。明日はライブで、その後の陽介との予定は何もない。
陽介からも何も言われていないし、合い鍵を返してきたって事は、きっと陽介の中では俺たちは既に終わっているのかもしれない。だって今日、陽介がここに来てから一度もキスをしてない。
キス……されてない。
そう思ったら、どうしようもなく胸が苦しくなってしまった。
俺……
どうしよう。
頭の中はまだ未練でいっぱいだった。
陽介の事を考え悶々としていたら、いつの間にか風呂から上がった陽介が俺の隣に座っていた。
「俺……どこで寝ようか?」
突然そんな事を言われて動揺する。
どこで寝るって……もう一緒にも寝てくれないのか?
嫌だよ……
最後なんだよ?
最後なんだから一緒に寝てくれよ。
俺は縋るように陽介のTシャツを握ってしまった。
「別に……一緒でいいじゃん」
泣きそうになる顔を見られないように目を伏せて、こう言うのが精一杯だった。
「なぁ……圭ちゃん、俺どうすればいい?……嫌かもしれないけど……俺、圭ちゃん……抱きたい 」
陽介のバカ!
嫌なわけないだろ……
抱いとけよ……もう抱けないんだから。
「嫌なわけないだろ! 抱いとけよ……もう抱けないんだから……」
お願いだよ陽介。
そんなにあっさり俺の事を突き放さないでくれ。
まだ恋人でいて……
「てか、抱いてよ……陽介。陽介が満足するまで……俺の事抱いて……お願い……」
わがままなのはわかってるんだ。
俺から言い出した事なのに、こんなにも辛いとは思わなかった。
見苦しいのはわかってる……
ここから出て行くのは俺。辛いのは残される方だと俺は思う。それなのに、陽介は俺に辛い顔を見せないようにしてくれてる。
ありがとう。
「陽介…… 」
荒々しく俺を抱く陽介に縋りたくなる。
「陽介……陽介…… 」
離したくなくて、離れたくなくて……ひたすらに陽介の名前を呼んでいたらキスで口を塞がれた。
……やっとキス、してくれた。
夢中で貪るようにキスを交わした。やっとキスをしてもらえた事が嬉しくて、嬉しいのに切なくて悲しくて。この時点で俺は涙を堪えることができなかった。
あっという間に服を脱がされ、少し乱暴に愛撫される。
陽介の吐息
陽介の指先
陽介の舌……
俺に触れる全てをこの先忘れないよう全身で受け止めた。
陽介に激しく舐られ、すぐに精を吐き出したくなる。
イっていいよ…
そう言う陽介の手を掴み、それを拒否した。
一緒にイきたい……
俺の中に陽介を感じたい……
陽介に俺の全てを感じて欲しい。
ずっと忘れないでほしいから……
俺は陽介にのしかかり、俺がされたように少しだけ荒々しく陽介を攻めた。
堪らない顔をした陽介に、挿れたいと言われ……嬉しさと悲しさで複雑な気持ちになってしまった。
やっぱりだめだった──
俺は顔を見られないように、涙を誤魔化すように自ら後ろを向いて陽介に腰を突き出す。恥ずかしさもあったけど、陽介に泣き顔を見られるよりずっとマシだ。
「……挿れてよ……陽介の好きにして」
少し躊躇ってる様子だったけど陽介は優しく丁寧に解してくれ、その後俺の中へ入ってきてくれた。
陽介……
好き……好き……
やっぱり俺、お前と離れたくないよ。
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