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第5話
「つまり、y=x+16となる」
「つまり、y=x+16となる」
「つまり、y=x+16となる」
「つまり、y=x+16となる」
先生の数式を説明する声が何重にもなって俺の頭の中に響く。
なんか、授業の内容が全く頭に入ってこない。
キーンコーンカーンコーン
「勇真、勇真!」
「う~ん、何?」
「お前、午後の授業全部寝てたぞ! 大丈夫か体調でも悪いんじゃ・・・・・・」
「え? ほんと? 大丈夫、大丈夫」
俺は席を立ち、かばんを持って教室を出る。
「俺、今日は早く帰るわ。じゃあな、僚也」
「おう! 気をつけて帰れよ」
返事を返す気力がなくて手を振った。
玄関まで行くと外ではぽつぽつと雨が降っていた。
「ちょっと降ってるけど、これくらいなら帰れるな」
ふらつきながら俺は歩いた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
そんなに歩いてないのに息がなんか切れてきた。これって、ちょっとまずい・・・・・・。
振り付ける雨は酷くなり、勇真は道に倒れこんだ。
*和樹サイド*
「うわ、降って来やがった」
俺はかばんに入れておいた折りたたみ傘を出し、空に向かって差した。
途中まで歩いて行くと、道に黒い物体が横たわっているのをみつけた。
「なんだあれ」
駆け寄ってみる。
「おい、高宮じゃないか。なんでこんなとこに。おい大丈夫か!」
声をかけても返事は帰ってこない。
朝から様子がおかしかったけどこいつ熱あったんじゃ。
俺が早く気が付いておけば・・・・・・。
考えてる暇なんてない!
勇真の腕を取り、負ぶった。
「うわっ! 冷てぇ、べっとべとじゃねぇーか」
勇真を負ぶったまま、小走りで家に向かった。
「おかえりなさい。かずくんって、どうしたの!? 二人とも濡れてるじゃない!」
「こいつが、道で倒れてて、体も冷たくなってるんです」
「大変! 早くお風呂に入れてあげて!」
「え! 俺がですか?」
「当たり前じゃない! 服準備しておくから早く入っちゃって!」
「えー、マジかよ・・・・・・」
勇真を風呂場に連れて行き壁にもたれさせ、自分は服を脱ぐ。
「さて、どうするかね」
服脱がすか・・・・・・。
服のボタンを一つ一つはずしていき、ぬがせて、ズボンのベルトに手をかけた。
本当にこいつ意識ないのか?
目は開いてるんだけどなどこ見てんだ?
俺は勇真の目の前で手を何回か振った。
しかし、反応が無く、ずーっとどこかを見ている状態だった。
てか、こいつ肌きれいだな・・・・・・って何考えてんだ! 俺!
ぶんぶんと大きく首を振り、風呂の扉を開け、勇真の腕を掴む。
「冷たすぎるだろ。ったく、こいつから先風呂入れとこ」
自分に引き寄せ、体が密着する。
「うおっ!」
マジつめてぇー。
こいつ、体にすっぽり収まっちまう。
こいつってこんなちっさかったんか?
かわいい・・・・・・。
無意識に俺は勇真のおでこにキスを落としていた。
「・・・・・・うわっ!」
さっきから俺なにしてんだ・・・・・・。
自分でやったことに対して恥ずかしさを感じ、顔が熱くなる。
勇真をそっと運び、湯に浸からせている間に、自分の体を洗い始める。
石けんを泡立てて体に付けようとしたとき「ぶくぶくぶく」と何かが音を立てた。
「なにぃぃ!」
勇真の体は滑って顔が湯に浸かり息ができない状態になっていた。
慌てて引き上げてから、勇真の体を支え一緒に湯に浸かる。
「ったく、世話かけさせやがって」
体が密着して体温が同じになっているのが伝わってくる。
そろそろ出ても大丈夫だろう。
湯から出ると、体を丁寧に拭いていき、服を着せる。
肩を貸して、ゆっくりと2階に上がり、そっとベッドに寝かせると、タイミング良くお母さんが食事を運んできた。
「かずくん、ありがとうね。これ食べさせてあげて。それと薬も。かずくんのご飯もここに置いておくからね。それじゃあ、ごゆっくりー」
お母さんは、なぜか意味深な言葉を言って部屋から出て行った。
「はぁ~」
思わず溜息が漏れる。
「おい、体起こせるか?」
返事はなく、高い熱のせいか、ぼぉ~としている。
仕方なく、体を起こさせ壁にもたれさせる。そして、卵粥が入った茶碗を手にしてレンゲで少しすくう。
それを、少し開いた口の隙間に押し込んだ。上唇に引っかけるようにしてレンゲを動かす。何とかそれを繰り返して茶碗の中身を空っぽにした。
薬も口の中に放り込み、水を少しずつゆっくり飲ませた。
起こしていた体を倒して寝かせると、薬が効いてきたのか寝息を立て始める。
「あぁ~、疲れた!」
作業を終え、自分のご飯を口の中にかきこんだ。
そして、空いた皿を下に持って行き、やっと自分も布団の中に入ることができた。
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