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第8話

「おい! 起きろ、朝だぞ」  カーテンが勢い良くシャッと開く音の直後、日光が直接顔に当たり、まだ眠っていたかった俺はうーんと唸りながら体の向きを変えて文句を言う。 「う、るさい・・・・・・まだ寝る・・・・・・」 「そうか、お前が、その気なら・・・・・・」  黒金は耳元でフーと息を吹きかけ「勇真、好きだ・・・・・・起きないとキスするぞ」と甘く囁きかけた。 「う、うわぁぁ!」  ゾクゾクと背筋に走る寒気で飛び上がった俺は、ベッドから転げ落ちた。 「何すんだよ! バカやろー」 「すぐに、起きないやつが悪い。ほら、学校行くぞ」  笑みを浮かべて、俺の頭にポンと触れてあいつは出て行った。  近くにあった鏡を覗いたら、自分の顔が赤くなっているのを見てしまった。 「何、赤くなってんだよ。俺!」  ったく、調子がくるう。  用意された朝食を口の中に放り込み、身支度を整えたら「いってきまーす」と玄関の戸を開けた。  すると、その先に黒金が待っていた。 「やっときたか。ほら行くぞ」  黒金はそう言って歩いて行く。  なんでまだいんの?   時間ぎりぎりに出たのに……。  てか、何この態度・・・・・・最初と全然違うじゃねぇか。 「何つったってんだよ。早くしねぇと遅刻するぞ」 「ま、まて、これはどういう状況だ?」 「どういうって、一緒に学校行くんだろ?」 「は?」 「つべこべ言わずに早く行くぞ」  黒金は俺の手首を掴んで無理やり引っ張る。 「お、おい! 離せ! 自分で歩く!」  手を振り払い、俺は早足で進むが、隣にピッタリと黒金が着いてくる。  お願いだから一緒に歩かないでくれ!  さしたる会話もなく無言のまま、しかも、一番嫌いなやつが隣にいる空間は俺にとっては苦痛でしかなかった。  教室に入って俺はやっとそれから開放された。  ここにさえ来れば、俺には癒しの場所がある。 「僚也ぁー。俺の癒しの園ぉ~」  ったく、一体何なんだよ!  あいつは!  ストレスが溜まるぜ。  僚也に抱きつき、自分に癒しを注入する。 「どうしたんだ? 朝からさ~」  呆れた声で呟きつつも僚也は優しく頭を撫でてくれる。  その光景を周りの女の子達がキャーキャー言ってる。  まあ、僚也もかなりのイケメンだから、俺と一緒にいたら注目の的になるよな。 「俺、僚也に頭、撫でられるのめっチャ好きだわ。すごく癒される。マジ俺の天使だぜ」  それに比べてあいつと来たら、悪魔に違いない。  ちらーと窓側にいるやつを見たら、こっちを睨んでいる気がしたが、何も見なかったと無視を決め込んだ。 「そう言ってもらえると嬉しいぜ。でも、そろそろ授業始まるぞ」  僚也は俺を引きはがし、席に戻り、俺も自分の席に座った。 「みんな、おはよう。今日は2週間後に迫った林間学校の班決めをしようとおもう。各自、必ず、二人以上と組むこと! それ以外の条件はなしだ! よし、さっさと決めろー」  先生の呼びかけで教室は一気にざわめき始めた。 「僚也! 俺と組もうぜ!」  俺はさっそく僚也を誘った。 「あぁ、いいぜ」 「やりぃー、林間学校楽しみだな」  椅子に座って僚也との会話を楽しいんでいたら、クラスの女子が二人近づいてきた。 「あのー」   一人はいつも恥ずかしそうにもじもじしている桜百華、もう一人は気が強そうな如月佳奈だ。  はっきり言ってあまりしゃべったことがないが、仲良くなるいい機会だな。  俺は笑顔で「どうした?」と聞いてみた。  もしかして、一緒の班になりたいのかな?  僚也もそれを察したらしく「俺らの班入る?」と手招きをした。  女子二人の表情はパッと明るくなり、如月が口を開く。 「よろしく! 高宮、重野。楽しくやろうな! ほら、百華も」  如月の後ろに隠れていた桜も小さな声で「よろしくね」と言ってきた。  女の子は大歓迎だ。てゆうか、桜百華ちゃんかわいいじゃん。やっぱ、かわいい子だよな。 「おう! よろしくな」  桜を見ながら笑顔で言ったら、顔が赤くなって如月の後ろに隠れてしまう。  うわぁ~、かわいい。  俺が見とれていると僚也が小声で冷やかしてきた。 「お前、ああいうのが好みか。単純だな」 「んな! うるせぇーよ。どうせ俺は単純ですよ」  恥ずかしくなって、むすぅーとふくれる。 「あはは、ごめんって」  僚也は俺の頭をくしゃくしゃとした。 「仕方ねぇから許してやる」 「ありがとさん」  昼休み 「おい、高宮! ちょっとこい!」  それは突然だった。 「はっ? 何、ちょ!」  黒金は俺の手を掴むや否や、抵抗をする間もなく教室から引っ張り出し、人気のない資料室に連れ込んだ。 「っいたいって! こんなところまで来て何すんだよ!」  手を振りほどくと黒金は俺をじっと見ていた。 「な、なんだよ・・・・・・」  黒金が無言のまま少しずつ迫ってきて、おれは壁際まで追い込まれていた。 「ち、近いって、どけよ」  なんだよ、こいつっ!  顔を背けて胸を押し返すが、黒金はさらに距離を詰めてきてバンっと壁に手を突いた後、やっと口を開く。 「・・・・・・俺、お前のこと好きだっていったよな・・・・・・」 「だから、なんだよ!」 「むかつく・・・・・・」  キッと眉をひそめた黒金が顎を無理やり固定して、唇を奪い口の中にまで入り込んできた。 「う゛んんっー」  なにしてんのっ!  クチュ、クチュと音を立てて黒金の舌は動きはじめ、隠していた舌を見つけては吸い付いて、逃げようとしても、何度も絡められ中をぐちゃぐちゃにかき回される。  息継ぎのまもなく混ざり合った唾液が唇の隙間から少し垂れた。 「ふっ、ん」  や、めぇろ。 「ふっぁ」  ガタン!と腰が抜けて俺は倒れ込み、その上に黒金が乗っかる。 「キスで腰抜かすとか。そんなに気持ちよかった?」  勝ち誇ったようににやりと笑みを浮かべて、黒金は聞いてきた。 「ち、ちがう!」  そんな訳ないと焦って否定するが、黒金は余裕の笑みを浮かべ「あっそ」と言って、満足そうに部屋から出て行った。 「なんなんだよ!」  くっそ! 何がしたかったんだよ!  そして、自分のものが熱を持ったことにショックを受けたのだった・・・・・・。 「最悪だ・・・・・・」

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