10 / 12

第10話

「坂木・・・・・・あれもってきぃ」 「銀条ったら心配性やな。そない焦らんでも大丈夫やて・・・・・・」 「ええから、はよせい」 「はい、はい」  誰かの話し声が頭の中に微かに伝わってくる。 「・・・・・・うぅ」  目をゆっくり開けるが視界がはっきりしてこない。目をこらして動こうとするが手足が拘束されているらしく動けなかった。 「お、やっとお目覚めですか? 勇真くん」  自分の名前を呼ばれて、やっと自分がどういう状況なのかを理解する。  俺、こいつのもう一人の仲間に殴られてつかまったんだ。  ここはどっかの小屋か。 「おい、何でオレの名前しってるんだ」 「そりゃこれ見たに決まっとる」  銀髪は生徒手帳をひらひらとさせて俺に見せてきた。 「あ! 俺の返せよ!」  手を伸ばそうとするが体は動かない。 「くそっ!」 「はは、いい眺めや。この銀条様に盾突くからそうなるんや」 「んなっ!」  なんだよ! チョーむかつく野郎だな。こいつ!  銀条は俺に近づいてきて顎を無理やり掴んでくる。 「んぅう」  縛られて寝かせられた上に顎まで固定されては、あいつから目を逸らせられない。 「はぁなせぇよぉ」 「やっぱ、お前かわええな。俺の目に狂いはない」  はぁ!? 何言っちゃってのこいつ! 男にかわいいとか言うやつ黒金ぐらいかと思ってたのによ。最近の男はこれがはやりなのか!?  銀条は俺から手を離す 「銀条またせたな。持ってきたでぇ~例のやつって、もう、おっぱじめちゃってた?」  坂木は小さな小瓶を掌にのせて丁寧に運んできた。 「まだや。それ置いて、お前は外の見張りでもしとき」 「はい、はい。手加減したりぃよ。きっと初めてやさかい」 「わかっとる。そのためのこれやろ」  坂木が持ってきた小瓶を銀条は手にしていた。 「せやな。ほな、ごゆっくり」  坂木は腕を振りながら去っていった。 「お前、俺に何するつもりだよ!」 「そんなん、いまに分かる・・・・・・」  なんか、嫌な予感しかしないんだけど!!  銀条は小瓶のふたを開けて、口の中に含む。そのまま、俺に近づいてくる。  おい! おい! ちょっと待て、何で近づいてくるんだよ。  俺の唇に銀条の唇が触れて、液体が流れ込んでくる。 「ん! ぅんっ!」  ゴクンゴクンとのど仏が下がり、液体が体の中に入っていき、銀条は離れた。 「まっずっ! てめぇ、何飲ませたんだよ!」  にやりと笑みを浮かべて「媚薬や」と言った。 「媚薬!?」 「せや。あんさんは今からわいのもんになるちゅうことや」 「え?」  銀条は俺に覆い被さり、服の中に手を入れてきた。そして、腹や胸をそっと撫でる。 「ひぃ!」  きもい! きもい! やめろよ! 「やめろ!」  声を張り上げるが、銀条は止まらない。  首筋に顔を埋め、筋に沿って舌が這う。 「やぁっぁ!」 「やらしい声。お前、首筋が弱いんだな・・・・・・」 「ちがぁっ!」  ヤバイ! これはマジでヤバイ。  体も熱くなってきたし、今、あそこに触れられたらヤバイ。  服に入れられていた手が少しずつ下に伸びてきて、ズボンの中を探っていく。 「ふっ! まんざらでもないんやろ。ちゃんと勃起してるやん」  カァーと顔に熱が集まった。 「さ、さわんな・・・・・・」 「触ってほしいの間違いやないの?」  違う! 断じて違う! もう、嫌だ! 「ちょ、何、手動かしてん・・・・・・の・・・・・・んっ! あぁぁ!」  銀条の手の中で転がされ、全身に甘いしびれが走る。 「やだぁ! いやぁだ!」  怖い! 嫌だ!   涙が目尻から溢れ、頬を伝う。  助けて! 黒金!   黒金? 何であいつの名前が・・・・・・もう、誰でもいいから助けて! 「こら、ここから先はあかんて!!」  小屋の外から坂木が声を上げ、物音がガンとなる。 「何や外が騒がしいな。今ええとこやのに」  どこがええとこなんだよ! でも今なら! 「離せよこの変態!」  俺は、両足で銀条を突き飛ばす。 「いった。勇真・・・・・・」   そして、小屋のドアが勢いよくバンと開け放たれ、銀条は目を丸くする。 「誰や、自分!」  銀条は立ち上がり、ドアを開けた人物と対面するが、光の加減で顔が分からない。 「やっと見つけた・・・・・・」 「なんかいうたか?」 「うるせぇよ! お前に用はない!」 「はぁ? 人んちに上がり込んでおいてその態度はなんなんや」  銀条は距離をどんどん詰めていった。 「お前か、高宮をあんな風にしたのは!」  ん? この声は黒金! 「黒金・・・・・・?」  黒金は拳を握りしめて、銀条の腹に一発パンチを入れた。 「うぅ! うぅ・・・・・・」  黒金の懇親の一発を食らった銀条は腹を抱えて床に倒れ込んだ。  俺のところまで走ってきてた黒金は手と足のロープをほどいた。 「大丈夫か? 高宮」 「く、くろがねぇ」  黒金の顔を見たら安心したのか、涙が溢れてきた。  乱れた服、手首足首に残ったロープの跡、赤く腫れた目。  今の俺、めっチャ格好悪い。  黒金は抱きしめて、そのまま、お姫様抱っこで持ち上げた。 「え、あ、ちょっ」 「いいから、動くな・・・・・・」  その声はどことなく優しかった。そのまま、自分の体を黒金に任せた。 「おい! そこに倒れてるやつ! 二度と俺の前に現れんな! こいつは俺が貰っていく!」  は、恥ずかしい台詞を堂々と言いやがった!  やめてくれよ!  俺は恥ずかしくて両手で顔を覆った。  こうして、俺たちは小屋を後にした。

ともだちにシェアしよう!