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第4話

 冬夜が吐き出すように言った話を聞き終えると、一誠は面白がるような素振りを見せず真剣な様子で口を開いた。 「気持ちは楽になったかい?」 「どうだろ…話して見ると、やっぱり俺の頭にはその人のことばかりが浮かんで、多分、まだ消えないんだろうな…って思った」 「それは、そのアシュレイ…って人にもう一度会ったらすっきりするのかな?」 「それも分からない。もう一度会って、言えなかった別れをきちんと告げられれば前に進めるのか、それとも際限なく求めるようになってしまうのか…」 「だよな〜人の心っていくら観測しても正確に情動を予測できないから、研究対象としては面白いんだけど」 「あはは…」  一誠はバラバラと心理学の学術書をめくっては、難しそうな顔で考え込んでいる。 「いいよ別に俺のためにそこまでマジに調べようとしなくたって…」 「おいおい私が一度気になりだしたら気がすむまで探求しようとする性格なのは知っているだろう?」 「お前のためかよ…!本当に相変わらずだなお前…」  友人の悩みですら研究対象として見る一誠。彼の面白いところであるが、決定的な短所でもあった。一誠は告白されて付き合いだした学校一モテる女子に対して、一体何がそこまで男性を惹きつけるのか体の隅々を観察し、度し難い変態性癖の持ち主として女子に白い目で見られることになった経緯がある。  そこまでするほどの観察対象として見られないのは、彼なりの友情の証だろうかと冬夜は思いながら、しかし胸がすっと軽くなっていくのを感じて一誠に感謝した。 「本気で探したいって言うなら、私も協力するが?」 「いいよ。そこまでして会ったって、迷惑がられるだけだろう」 「我が友人ながら、難儀な恋をしてしまったようだな」 「…そうだな」  首筋に残った噛み跡に服の上からそっと触れ、アシュレイと過ごした一夜を思った。いつか、この記憶は思い出となり、自分は思い悩むことはなくなるのだろうかと冬夜は寂しいような感覚を覚えた。

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