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第5話
「それにしても、アシュレイという人はまるで秘密主義のようだな」
「謎が多いって言いたいなら、まあそうだな」
「ああ、写真を嫌がるところは特に。痕跡を残したくなかったようにも思えるな」
「な、まるでアシュレイに後ろ暗いところがあるみたいに…」
「何、ただ少し不思議だと思っただけだよ。ハロウィンの仮装イベントなんて、記念として写真の一枚も撮りたくなるようなところにきておいて、親しくなった東雲との一枚も残すのを嫌がるほどの写真嫌いとは?」
「考えすぎだろ…」
「小さな違和感を探求して得られる発見というのもあるよ。でも、これは東雲の問題だからな。あまり強く踏み込まないでおこう」
「そうしてくれ…」
一誠の鋭く追及するような物言いに、たじたじになりつつも冬夜が対抗すると彼はあっさり引いてくれた。深追いしすぎると時に人間関係を壊してしまうと、彼も学んでいたのだ。
冬夜は話題を変えようとして、最近何か面白い発見はあったかと尋ねた。
二人が高校生の時は、よく噂の心霊スポットに行ってきたとか、宇宙人と交信する方法を試してみたとかの話をよく聞いた。冬夜は、一誠が行く先々で起こすトラブルを時にヒヤヒヤしながらも耳を傾けるのが好きだった。
冬夜の問いに一誠先ほどの様子とは一点目を輝かせて「よくぞ聞いてくれたな!」と立ち上がった。
「実は、以前訪れた魔術の専門店から面白いアイテムを入手してね!」
冬夜は魔術の専門店?と早速飛び出てきたワードに呆気に取られながら、一誠がクリアファイルに入れた数枚のA4用紙を取り出し、机に並べた。
用紙は、コピーか何かのようで、白い紙面の上に褐色に古ぼけた紙が写り、そして褐色の紙面上には何処の言語か分からない様な文字が書き連ねてあった。
何故だか、冬夜にはその文字とも言えない記号の羅列が酷く恐ろしく感じられた。今にもその記号は黒く滲み出し、靄となって飛び出してきそうな__。
「これは…?」
「魔術師の店長曰く、『魔界の文字』らしい」
「魔界の文字?」
一誠の口から本当かどうかわからない様なことが飛び出てくるのはいつものことだったが、記号の一列を見ていると、それはとても納得のいくような言葉に冬夜は感じた。
「店長のご先祖様がこれまた魔術師だったらしいのだが、その後先祖様がある日魔界への扉を開くことに成功したらしく、その証拠として唯一残っているのがこの魔界の文字の写しなのだそうだ」
「写し…」
「そう。魔界の物質は本来人間界に持ってきてはいけないらしいのだが、その後先祖は、自分の体に魔界で見た文字を彫ることで、魔界の文字を持ち帰ってきたらしい」
「彫るって、体に文字の傷を!?」
「そう。そしてご先祖様は元の世界に帰ってきた途端、彼の子にただ一言、体の傷を紙に写し取る様に行って直後に亡くなったとか」
「そんな大それた代物、よくコピー貰ってこれたな!」
「うれしいことに、店長、私には素質があると言ってスキャンするのを許してくれたんだ!」
「何の素質だ…」
見た瞬間感じた気味の悪さは、そのような経緯からかと冬夜は腕をさすった。一誠の話に恐怖を覚えたのは久しぶりだった。
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