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第6話 甘崎一誠の探求
「お前が今まで見せてきてくれたオカルトグッズの中でも、トップクラスに胸糞が悪いな…」
「店長の家系では、代々曰く付きのものとして伝承されてきたからねえ。この書面に書かれているのは、どんな清らかな聖人でさえも穢れ発狂するという魔界において、狂気に染まらない魂を持つための願掛けの方法だとか」
「いよいよ電波すぎて何を言っているのかわからなくなってきたぞ…」
冬夜は貧血でも起こしたかのように頭をくらくらさせながら、かろうじて相槌を打っていた。オカルト用語の羅列にこめかみを押さえながら、冬夜は呆れた様子で一誠に尋ねた。
「それにしても、まさかその魔界の存在、信じてるんじゃないだろうな」
「信じる、のではない。私は魔界と称された異次元の存在の可能性を感じている」
「その、根拠は?」
いつもなら「はいはいそうか」と相槌を打つだけだった冬夜が、珍しく一誠の発言を追及した。そうでもしないと、ますます頭がぐらつくような気がしたからだった。
一誠は真剣さを感じさせる硬直した顔つきで、部室の隅に置かれていたダンボール箱の方へ向かった。それを抱えて持ってきて机の上に置くと、そのダンボール箱は奇妙なほど厳重に貼られた黒いガムテープで閉じられていた。
「私は、一度儀式を行ってみた。魔術店で見た別の古文書の記述の記憶を辿って、何かが観測できないかと試して見た」
冬夜はカッターでダンボールを切っていくと、中からアルミホイルで巻かれた直方体の物体が姿を表した。冬夜は目を反らせずに、一誠がアルミホイルを解いて行くのをじっと見つめた。
一部中から姿を見せたのは、小さなガラスケースのようなもの。中にはワタのようなものが敷き詰められているようで、白い影が見えた。
やがて、完全にアルミホイルが取り払われると、そのガラスケースの中に収められているものに、冬夜は驚愕で目を見開いた。
「コウモリ、の、死骸…?」
「に、しては随分と骨格が可笑しい。毛と皮で覆われて一見よくわからないが、コウモリの頭部の形が、顔面が平べったく口先が飛び出していない。骨盤の幅もまるで人間のように幅広い。コウモリというよりは、小さくて羽の生えた人間のような…」
「つ、つくりものだろ…?それ…」
「いつも私が骨董品屋で摑まされているのとは違うさ。私は魔術店で記憶した儀式を行った後、この人間蝙蝠の死骸を得た。突然、私の目の前の地に落ち、のたうち回った後息絶えた」
「………」
冬夜はガラスケースの中の『人間蝙蝠』と目があったような気がした。
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