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第11話

「うーん是非ともコミュニケーションを取りたいところだけど、今は異次元の探索が目下の目的か。申し訳ないヴァンプちゃん、おしゃべりはまた今度にしよう」 「甘崎、蝙蝠またミイラに戻りかけてるぞ」  ひとしきり一誠が蝙蝠の身体を隅々まで探ると、冬夜の言葉を合図にぱっと蝙蝠を解放する。すると、すっかり憔悴した様子の蝙蝠がフラフラと蝶のような飛び方で冬夜の元へと向かい、その肩にひょいと飛び乗り、怯えた様子で一誠から身体を隠そうとしていた。  先ほどの一誠の興奮した様子を見ていたら、喋る蝙蝠がいまいち怖くなくなったので、冬夜はそのままにしておいた。 「ニンゲン…コワイ……」 「恐怖で片言になってる…」 「うーん、まずは何処を探索するかな」  興味の対象を完全に外へと移し、きょろきょろとし始めた一誠を尻目に、冬夜は肩に乗った蝙蝠に話しかけてみることにした。 「そういえば、ここってつまり魔界、なんだよな?ってことは、お前は魔物ってことになるのか?」 「は、あ!?魔物などという低俗な者たちと一緒にするな!私は、ヴァンパイア大公爵の直属部下!誇り高きヴァンパイア騎士のヒューズだ!」  居丈高にそう名乗った蝙蝠、ヒューズは魔物とは魔界で最も下層に位置する獣たちのことであって、いくつかのエリアに別れた魔界はそれぞれ大公爵と呼ばれる種族ごとの長によって統治されているのだという。 「ヒューズは、じゃあヴァンパイアってことか」 「ああ。今はこのように化身の姿ではあるが…元はお前たちニンゲンとそう大差ない姿をしている」 「へえ」 「大公爵はニンゲンにとっては見ることすら脅威となる偉大な方々だ。お前はともかく、あ、あの変態ニンゲンでは一目見るだけで発狂することだろう。お前、あの変態の友人だろう。大人しく元の世界に帰るように説得しろ」 「いやいやスイッチ入った甘崎を説得するのは無理だ。甘崎は俺よりずっと頭もいいし…って」  ヒューズの頼みごとを聞いて、いやいやと首をふっているとふとヒューズの一言が頭の中で引っかかった。 (『俺はともかく』?)  その時、とてつもない存在感の波動のようなものが、冬夜の後ろに迫っていた。

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