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第12話 再会

 そのあまりの存在感の強大さに、振り向くことができなかった。強烈な熱線を背中に浴びているかのような感覚。冬夜はただ立ちすくむことしかできない。 「人、間…?」  後ろから声が聞こえる。しかし、冬夜にはそれがとても人間のものとは思えない。まるで獣が人間の言葉のような音を発しているようなそんな不気味な印象を抱いた。  振り向けない。体が金縛りにあったように動けなくなっていた。  そんな中、声を上げたのは冬夜の肩に乗っていたヒューズだった。 「げえ、もじゃもじゃ畜生狼男」 「あいつの部下に免じてその暴言は聞き流してやるよ。それで、なんでこんなところに人間が?また臨死で境界越えた死にかけか?いや、ていうかお前…」  思わず冬夜が振り向くと、そこには狼がいた。  茶色の毛で覆われた顔面、首、腕、胴。その隙間から光る金色の目は冬夜を見据えている。口の端からは鋭い牙が覗き、頭頂部には見事に立った耳がある。直立して冬夜を見下ろすその威容は、狼というよりは熊が印象としては近い。腕の一振りで人の命を刈り取れそうな雰囲気は、冬夜に本能的な恐怖を抱かせた。  しかし、この異様な姿の狼に冬夜は初めて遭遇したような気がしなかった。 (怖い…)  頭の中に浮かんだ一言はそれだった。  蛇に睨まれた蛙とは、まさにこのような状況のことをいうのだろう。巨大な狼に見据えられて、冬夜は声すら発することができなくなっていた。一言でも喋ったら殺されてしまいそうなほど、そんな迫力を冬夜は感じてしまっていた。たとえ、狼の側がただ単に興味の視線を向けているだけだとしても。  そんな時だった。 「____ヴォルフ、怖がってる。人間の姿に戻るんだ」  瞬間、とくん、と冬夜の心臓が一際大きな脈を打った。全く動けなかった体が自然と動き出し、あれほど恐怖を感じた狼に対して背を向けて、声のした方をみやった。  それは、今の冬夜にとって信じられない再会だった。  忘れられない、赤みがかった金色の髪に、透き通るような白い肌。鋭い双眸は血のような赤色で、人間離れした雰囲気を醸し出している。  冬夜と目が合って、美貌の男は柔らかく微笑んだ。 「アシュレイ……!!」  忘れもしない。あのハロウィンの夜に冬夜を抱いた、アシュレイその人だった。

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