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第17話 再会の一夜
大公爵などという肩書きを持っているだけあり、アシュレイの家は冬夜が想像しているよりも豪華な城だった。昔のヨーロッパのお城と形容するのが相応しい。三階建の建物の屋根は尖塔型になっており、左右対称に作られたそれが城の目の前にある湖に逆さまに映っている。周りには色とりどりの薔薇が植えられた庭園。
アシュレイはその上を飛んで、冬夜と共に城の一番高い尖塔のバルコニーへと降り立った。
アシュレイは焦れる気持ちで冬夜の顔を覗き込むと、冬夜は強制ジェットコースター体験に目を回していた。
「ふっ……」
「め、目が回る……!」
思わず焦る気持ちも落ち着いて、アシュレイは冬夜を床に下ろした。冬夜はへろへろ、と足の力が抜けたように、床に膝をついた。
「す、すまん。怖かったか……」
「怖かったっていうか……一気に頭に入ってくる情報が多くてオーバーヒートしたというか……」
なんせ、ここは魔界だ。うっかり下を覗き込めば異形の魔界人たちが空を飛ぶ大公爵と謎の地味男に注目している光景が目に映り、上を見ればドラゴンが滑空しているのだ。
「……人間界から突然迷い込んだんだ。混乱するのも仕方ない……紅茶でも飲むか?」
冬夜はまだ視界をぐるぐるとさせながら、アシュレイを見上げた。我慢の限界、なんて途轍もなく色気のあることを言い放ち、連れ去ったくせに冬夜が弱っているのを見ると、こうして気遣ってくる。
アシュレイは本当に優しい。冬夜はまた心臓がキュンキュンと高鳴るのを感じた。
しかしやっと望みの二人きりになれたのに、ここまで来て紅茶を飲む気にはとてもなれなかった。
冬夜だって、ずっと我慢していたのだ。
「アシュレイ…あの…」
「立てるか?温かい物でも飲めば少しは気分も落ち着くと思うが…」
そうやってアシュレイが気遣わしげに冬夜の肩に手を回し始めた。冬夜は意を決して、アシュレイにキスした。
が、位置がちょっとずれた。唇ではなく、唇に限りなく近い頬に、冬夜の唇が当たった。
「……!」
アシュレイの目が大きく見開かれる。冬夜は照れながら顔を離すと、羞恥に顔を染めながら呟いた。
「俺…かっこつかないなぁ……」
誤魔化すようににへへ、と笑うと、再び冬夜の体がアシュレイによって抱き上げられた。
「うおっ!」
冬夜が思わず驚き声を上げる間に、冬夜は塔の中の部屋、バルコニーに入ってからすぐのところにある豪奢なベッドに横たえられた。そして、冬夜の上に余裕のない表情を浮かべたアシュレイが覆いかぶさってくる。
「もう…っ、途中でやめてと言われても止まらないぞ…!いいのか?」
「アシュレイ……いいぞ、それに、もう二度目なんだ。遠慮なんて、必要ない」
冬夜の視界に、ゆっくりと迫ってくるアシュレイの美貌が映り込む。冬夜が目を瞑ると、間も無く唇が重ね合わされた。
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