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不屈のラブファイター 12

 暁が高杉の前から消えて、あっという間に半年後の月日が流れた。 「白石くーん。シャンプーお願い」 「はいッ」  白石くんこと暁は、派遣された大手チェーン美容院でバリバリ働き出していた。 周りのスタッフはほとんど年下である上に、新入りだからパシリにされることも多いが、活気がある店で続々新店舗も誕生、独立のチャンスもある乗りに乗っている企業だ。 「今日は黒岩様がお見えになられるから、特に気を引き締めてね」  チーフが一人一人に声をかける。 「黒岩さんって…?」  その辺にいるスタッフに尋ねてみると、 「あの黒岩繊維の社長令嬢だよ!」 「年上なんだけど全然そんな風に見えなくて」 「美人で金持ちなのに全然イヤミじゃないの!」  あまりのリアクションに少々気押されながらも、そこまで言われれば女性と言えども一応興味はあった。  そうこうしているうちに、チーフの大声。 「さ、いらっしゃったわよ!みんなお出迎えして!」  首根っこを捕まえられて店の前まで行くと、小柄な一人の女性が車から降り立った。 「皆さん、今日もお世話になります」  美人、というよりは可愛らしい、清楚な女性だった。 特に化粧も濃くなく、服も決して派手ではないが、どことなく気品が漂っていた。 「あら、新しく入った方?」  自分に問いかけられているとも気づかず、暁は不躾にも舐めまわすように女性を見まわしていた。それに気づいたチーフが飛んできて、暁の頭を後から押して無理やり頭を下げさせた。 「ハイ、そうなんです!まだ2ヶ月しか経ってなくて役立たずなんですが…」 「黒岩小百合と申します。以後お見知りおきを…」  そんな下っ端の失敬な男にも、きちんと挨拶してくれる、感じのよい人なのであった。  チーフが小百合を担当し、各々は持ち場に戻る。しかし、耳だけは皆しかと小百合とチーフの会話を聞いているのが、この店の常のようだ。 ケープをかけ、丁寧に髪をブロッキングする。 「今日は特別キレイにお願いねっ」  弾む声で言う小百合に、何かあるのかと問うチーフ。 言いたくて仕方がなかったように、小百合は答える。 「実は…婚約パーティなんです」  店内がひっくり返ったように、至るところで粗相の音が鳴った。 ロッドをばら撒いた者、椅子に躓いて転んだ者…。 チーフはそんなお馬鹿な部下達に一瞥を投げかけ、同時に小百合に祝福の言葉をかけた。 「それにしても、今まで小百合さんはそういったお話ことごとくお断りされていたと…」  黒岩小百合、若く見えるが30歳である。 この容姿、この家柄、この人柄で、周りが放っておくはずがない。 両親からも何度も縁談の話を持ちかけられた。  しかし彼女はそれら全てを断ってきたのだ。それは何故なのかは知らないが、そんな小百合が決意を固めたお相手とは…?

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