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不屈のラブファイター 13
「今回は…私の一目惚れなんです」
顔を少し赤らめ、俯き加減で言う小百合に、またも鈍い音や破壊音で店内が騒々しくなる。
チーフはもうそれには応じず、営業トークに徹した。
「んまぁ、そうなんですか!お相手、どんな方か伺ってよろしいですか?」
実は小百合も話したそうである。
「とても落ちついていて、優しい方です。…私のほうが年上だとはとても思えませんもの」
スタッフ達は混乱の極み。
我らのアイドルを独占され、しかも逆タマ、おまけに年下。
いろんな意味で一度拝んでみたいと誰もが思った。
テンションは最低だ。
暁はそんなスタッフ達を横目で見ながら、雑用に追われていた。
確かにあの奥手そうなお嬢サマが一目惚れするなんて、一度見てみたいものだと他人事程度には興味を持っていたが、しょせんホモには関係ないと屋上に干したタオルを取りに上がった。
ついでに屋上で一服やって、タオルを取り込み店に戻ると何やら先程とは違った騒々しさ。
「そぉなんですかぁー??そりゃぁ小百合さんが惚れるわけですねぇ~」
さっきとは打って変わった、女の黄色い声がやけに店のテンションを高めていた。
相手が来ているのだな、と暁は思った。
知り合ったきっかけだの式はいつごろだのくだらない質問を女性スタッフ達は浴びせていた。
「白石くん、タオルまだ?!」
鬼瓦のような顔でチーフが呼ぶので、大慌てで店に出る。
「遅くなってすみ…」
暁の言葉など聞こえていないかのように、小百合の周りに人だかりは消えない。
構わず近づいていく暁、持っていた洗いたてのタオルを全部髪の毛だらけの床に落とす。
「それにしてもすごいことよね、『黒岩繊維』と『高杉』がくっつけばもう…」
気が遠くなりそうだ。
何がどうなっているのかわからない。
目の前にいる、
黒岩繊維の社長令嬢が一目惚れした、
今女性スタッフからキャーキャー騒がれている、
逆タマで年下の憎いヤツとは、
確かにあの、
恋しくて恋しくてどうしようもない人だった。
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