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不屈のラブファイター 18

「お帰りなさいませ店長。速水様という方からお電話がありまして、もうすぐこちらに…」  店に戻り、店員からの報告を受けていると、早速速水様が登場した。 「高杉さんっ」  走ってきたのであろう、頬は上気して髪は風を受けて跳ね上がっている。 「ご結婚されるんですね、おめでとうございます!」  高杉は店員に応接室へコーヒーを二つ持ってくるよう言うと、静流を奥へ通した。 「今朝の新聞で知ったんです。奥様おめでたなんですってね」  いつもの聡明な顔立ちに、何か違和感が…。 「…ねぇ静流くん、さっきから言おう言おうと思ってたんですが…走ってきました?髪、ボサボサですよ」  高杉は静流の髪を優しく撫でた。 静流は赤くなって俯き、されるがままだ。 「…それで、思ったんですけど…高杉さん、どうして女の人と…」  高杉は撫でていた手をさりげなく静流の背中まで持っていき、両手を回した。 「あれは会社を大きくするための結婚で、親孝行みたいなものなんですよ。となれば一応後継ぎは必要なわけで…」  静流も応じるようにぴとっと体を預けてくるが、違う。 今必要なのは、今欲しいのは、この感触じゃない。  あの、解き放たれるような。 全ての苦しみから救われるような。 あの、ぬくもり。  部屋に戻っても、何もする気が起こらない。 この気持ちを自分で認めたくなかった。 認めたら、何かに負けてしまいそうな気がした。  引き出しの奥から、古びた写真を取り出す。 絵筆を持った中学生と、先生らしき人の写真。 高杉は心の中で写真に向かって問い掛ける。 また人を、あなた以外の人を愛してもいいですか、と。

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