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不屈のラブファイター 19
街の電気屋の前で、暁は金縛りにあったように立ち尽くしていた。
売り物のテレビでワイドショーがかかっているのだが、その中に見知った顔が映っていた。
右下のお決まりのスーパーには、『黒岩繊維+高杉の今後は?!』と、大々的に書かれている。
『私が個人的にお話できることではありませんので』
ブラウン管の中で、あの人が喋っている。
大勢にマイクを向けられて、ちょっと不機嫌そう。
でも、相変わらず、キレイだ…。
暫く見とれていたが、我に返ると空しいものがあった。
つくづく未練がましい男だ、と自嘲してみてもまた虚しい。
テレビから目を逸らし、結局キス止まりの仲だったなどとぼやきながら進行方向を向くと、今ブラウン管越しに再会したはずのその人が、真正面にいるではないか。
暁は咄嗟に踵を返し、走り出した。
もう、今更顔を合わせたくない。せっかく諦めようとしてたのに。
一方高杉は、逃げられると追うという人間の条件反射に則って、暁を追う。
何故、俺の顔を見て逃げるんだ?
すんでのところで高杉が暁の腕をキャッチ、そのまま力いっぱい引っ張った。
暁は後ろ向きに倒れ込む。
「なんで逃げる?!」
ひっくり返った体勢をなおし、起き上がって暁は言う。
「—―顔見たくなかったんですよ、今さら。せっかく諦めようとしてるのに、何で現れるんすか—―」
高杉はやけに小さく見える暁の背中を見ていた。
「…俺、小百合さん大事にして欲しいって思った。二人を祝福しようと思った、でも…小百合さんが店にくるとやっぱりイヤなんです。そんな自分にまた腹立って、んで店も辞めて」
暁は段々震えるような、聞き取れないほどのか弱い声になっていく。
肩も小刻みに震えているように見える。
高杉はなおもずっとその背中を見つめた。
「二人で幸せになるのに、俺なんかが周りうろうろしてたら迷惑でしょ、だから―――」
そこまで言った時、暁の両肩に重みが乗った。
「—―愛してやる。それが望みなんだろう。愛してやるから…」
両肩に乗った両手は首を巻き、次に肩には高杉の頭が乗った。
「…だから、もう俺から離れるな」
不思議と、舞い上がるような感覚はなかった。
夢にまで見た、念願の両思い。
しかも、高杉の方から言ってくれるとは。
だけど、何故かえらく冷静に受け止めている暁だった。
「…さんざん振りまわした挙句、これですか」
暁は姿勢と表情はそのままに、肩に回された高杉の手を取った。
「悔しいけど…嬉しいです」
そこでやっと暁は微笑んだ。
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