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不屈のラブファイター 21

 そんな時、暁はふと思い出した。 よくティーン向けの雑誌などで、付き合い出した彼に体を許した途端に捨てられた話や、軽く見られないためにも慎重に時期を見計らうようにとの記事が頻繁に出ていたのを。  一体いつの時代に、どういう経路でそんな雑誌を読んだのか定かではないが、暁はなるほどと手を打った。 (ふ…伊織さん、俺がそんな男に見えますかい…)  立ち上がると、寝床に入ろうとしている高杉に突進し、抱きついた。 「いやだな伊織さん、俺カラダ目当てじゃないですよ。だから…ね、伊織さん…」  もぞもぞと衣服をまさぐる暁の頭を、鈍い衝撃が襲った。 息を荒げた高杉の手には大きな目覚し時計。 思いきり目から星が出たが、ふらふらと立ちあがって暁はなおも尋ねる。 「でも伊織さん…好きな人とならしたくなるでしょ?静流とか先生とかとは…いででっ」  げしげしと何度も蹴りつけられて、さすがに少し気弱になる暁。 「伊織さん…やっぱり俺じゃ、先生の替わりにはなれませんか」 「当たり前だ」  鋭い即答に、ますます心がしぼんでいく暁であったが、高杉は腕組みをしたまま続けた。 「誰の替わりでもない。お前はお前だろ」  意外な発言に暁は目を丸くした。 ほんわりと、しぼんだ心にまた小さな火が灯った。 「別に先生の替わりなんて欲しくないしな。あれで結構うるさかったんだ…」  もうそんなことは聞いちゃいない。暁の心のボルテージは最高潮に達していた。 「伊織さんっ!!」  周りを気にせぬ後方からの猛タックルに、高杉は突き飛ばされて勢い良く壁に頭をぶつけた。ゴツッという硬い音が部屋に響いた。 「いっ伊織さん、大丈夫ですかっ」  殴られる、蹴られる、はたまたもっと酷いことを…? 暁は高杉の心配と同じぐらい自分の身の危険を感じた。 かなりのダメージを思わせる高杉のスローな起き上がり方に、ますます恐怖を禁じ得ない。 「お前…」 「はいっ、ごめんなさいっ」  高杉は何故だか振り返らない。 暁は恐くて近寄れず、ただただひれ伏すのみ。 「お前、名前なんていうんだ?」  シチュエーションにそぐわぬ問いに少々戸惑いながら、そして今まで名前を知ってもらっていなかったことにショックを受けながらも、暁は自分の名を答える。  高杉は依然こちらを向かず、暫くの沈黙が続いた。  酷く長く感じた、ほんの数秒。 今からどんな目に遭わされるのか、 高杉は何を考えているのか、 これから二人はどうなるのか、 いろんなことが走馬灯のように頭を回っていた。 —―そして。 全ての問いへの答えを、その時暁は聞いた。 「…暁、好きだよ」

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