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不屈のラブファイター 22

「伊織さんお帰りなさい!僕頑張ってお夕飯作ってみちゃったあ」  伊織が仕事から帰るとすっかり新妻気取りの暁がおたまを手にお出迎え。 「今日は野菜炒めとぉ~、アジのフライとぉ~」  嬉々としてメニューを紹介する暁の一方で、伊織の表情はみるみる曇る。 「お前…」 「はい?料理できると思ってなかったっしょ?ギャップ萌え?」 「俺と付き合いたいなら覚えておけ。俺は、肉と野菜と魚は食べない」 冷たく言い放つと、冷凍庫の冷凍うどんを一人分、レンジで温めズルズルと啜りだした。    食事が済んで後片付けを終えると、途端に暁の目がぎらついてきた。 「さてゴハンも済んだことだし、ね、伊織さん…」  やけに甘みを帯びた声で囁きかける。伊織はまたかとうんざりした表情で顔を背ける。 「だからそういうのは…」 「だって伊織さん、愛してやるって」 「だからすぐそうやってそっちにもってくのやめろ」  会話をしながらも暁の体は伊織の自由を奪っていく。 「やめろって言ってる、人の話を聞け」  腹にグーパンを決められ、ようやく暁は伊織を解放した。 「伊織さん、俺のこと好きじゃない?」 「もう一度言うぞ。俺は誰かに抱かれることはない」 「じゃ俺ももう一回言いますよ。伊織さんになら抱かれてもいいです」  両者、しばし睨み合いが続く――  小一時間後。 つまらなそうにシャワーへ向かう伊織と、床に転がる暁。 いつだったか言った通り、暁が以前静流に行ったのと同じ目に遭わせた。 「敵はとったよ静流くん」  ぼそっと呟いて、シャワーの栓をひねった。  ようやく愛し合って、その愛を確かめるためにあるはずの行為は、暁を心も体もズタズタにしただけだった。バックバージンの暁に前触れのない挿入は、拷問でしかなかった。 今も床に転がされたまま動けない。周辺には血痕が散っている。 シャワーを終えた伊織が少し離れたところで立ったまま、無言で暁を見つめる。 「伊織さん…」  見上げる暁の目はまだ涙で潤んでいて、毛布の中でうずくまる様はさながら大型犬のようだ。 「伊織さん、気持ちよかった…?」  せめて気持ちよくなってくれたのならまだ救われると思いきや 「ぜんっぜん」  吐き捨てるように言われた。  意地悪ではなく、本当の話で、伊織にとっても全く良くなかったのだった。忌々しげな顔でタバコをふかしていると 「ね、伊織さん、やっぱり逆なんじゃないかなあ?」  暁が背後からにじり寄ってきた。まだそろそろとしか動けないが。 「なんだと?」 「つまり、こっちのほうがいいんじゃない?ってこと」  移動すらぎくしゃくしてるくせに、あっという間に伊織を組み敷いた。 「馬鹿言うな、そんなわけ」 「試してみないとわからないでしょ」

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