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Don't Be 4

 小学校に入学する頃には、完全に異端児であることが周囲にもはっきりとわかった。コミュニケーションが取れないのだ。話しかけられてもおどおどと、蚊の鳴くような声で返事するのがやっと。しかも相手の方を見ずに、だ。休憩時間もいつもひとりで自由帳に絵を描いていた。架空の街だったり、憧れの乗り物だったり、外の景色だったりと、さまざまな絵を描いては空想の世界に浸った。空想の世界の中は、伊織を傷つける人はいないし、何をしても自由だった。  そんな彼なので、当然、いじめの対象になることもしばしば。青白くやせっぽちで背も低かったからなおさらだ。いつのまにか伊織は二言目には謝るくせがついていた。  そしてこの頃になると、父の妻から顔を合わすごとに言われる 「生まれてこなければよかった」 「あの時一緒に死んでいたら」  という言葉が、なんとなく理解できていた。 そうか、自分は生まれて来てはいけない人間だったんだ。だからみんな自分のこと嫌うんだな。 ――生まれてきて、ごめんなさい。

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