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Don't Be 5

 中学に入ると、美術部に入部した。小学校に美術部はなく、伊織は中学に上がって美術部に入るのを心待ちにしていたのだ。初めてのアクリル絵の具、油彩、クロッキー。ワクワクすることばかりだった。こんなことは生まれて初めてだ。放課後も毎日のように美術室に残って描いた。 「いつも熱心なのはいいけど、試験勉強やってるのか?もうすぐ期末だろう」  声をかけたのは美術部顧問・立花稔。昨年芸大の大学院を出て今年から教鞭をとっている、新米美術教師だ。 「ごめんなさい、もう帰りますから」  本当は帰りたくない、あんな家に。なるべく遅くに帰りたくて、いつも美術室に残っているのであった。 「や、描いてるのはいいんだけどな、他のことをおろそかにしたらダメだぞーって話だよ」  稔は若くて爽やかで、生徒の間でも人気の教師だ。分け隔てなく親しみを持って生徒に接するところが好かれている。 「あの、ここの陰影なんですけど」 「ああ、ここはなー」  伊織の疑問を魔法のように解決してくれ、新しい手法を教えてくれる。伊織もまた、稔に好感を持っていた。  美術室に入部し、絵画にのめり込むようになって、ますます伊織は他人と関わらなくなった。空想の世界に身を置く比重が重くなってきたのだ。そのせいもあって、中学校に入ってもいじめに遭った。

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