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Don't Be 7

 それから伊織は必ず毎日美術室に残るようになった。稔も以前より顧問としてよく顔を出すようになった。 ふたりきりになると、稔は伊織によく触れた。描いている時に肩に手を置くあたりから始まり、後ろから抱きしめられたり、腰に手を回されることもあった。伊織は触れられるのはあまり好きではなかったのだが、拒絶する勇気はなかった。せっかく手に入れた居場所、せっかく手に入れた理解者を失いたくなかったのだ。  じめじめと、気が滅入る天気が続く。 梅雨も間近なある日、美術室に行くと誰もおらず、伊織は稔を探した。となりの準備室かも、と思い立って行ってみると、やはり稔がいた。 「先生っ」  この頃になると伊織は、稔にだけは笑顔を見せるようになっていた。懐いている、という表現が一番しっくりくるかもしれない。 「あ、伊織。早かったな、ちょっとそこのソファに座って待ってて」  稔に言われた通り、ソファにちょこんと腰掛けた。稔は何やら画材を整理しているようだが、どうも落ち着かない様子。  先日衣替えがあり、伊織の夏服姿に、完全に心を持っていかれてしまっていた。今まで目にしなかった細腕や、詰襟に隠されていた細長い首筋、開襟シャツの合間から覗く鎖骨、折れそうな腰。見ないようにしながらもどうしても目がいってしまい、整理も手がつかず進まない。 「先生…?」  キス、してしまった。  生徒に、それも男子生徒に。  あんなに頑張って教員免許取ったのに。  新聞に載ったりするのかな!?  咄嗟にやってしまったものの稔は内心慌てふためいていた。やらかしてしまった……! 「あっ、その、伊織、ご、ごめんなっ!今のはその」  慌ててなかったことにしようとする稔に 「どうして謝るの……ぼく、嬉しかったのに」  しょげて泣きそうに俯いてしまった。萎れた花のように。 「……伊織!」  理性の糸が切れてしまった。どうやって抱いたか覚えていない。ただ乱暴に己の欲を伊織にぶつけた。

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