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Don't Be 10

 月日は飛ぶように流れ、あっという間に伊織も三年生に進級した。 かなり身長が伸び、うっすらと筋肉もついてきて、ようやく年相応の男子らしい体つきになってきた。それでも持ち前の何とも言えない中性的な魅力は失われるどころか増す一方で、底知れぬ色気に稔は先行き不安になったりもしている。  伊織はというと、何でも甘やかしてくれる稔に、少々不満を抱いていた。どんなわがままをいっても聞いてくれるのは、子供扱いされているからではないのか?もう子供じゃないのに。  伊織の不満はもう一つあった。稔が他の生徒からも人気があることだ。稔が伊織にそう思っているように、伊織もまた稔が他の人と親しくしているのを見るのは嫌だった。にもかかわらず、いつも稔は生徒から慕われ、美術室に生徒が遊びにくることもある。伊織はいつも隅っこでキャンバスに向かいながら、苦々しい思いをしていた。  僕以外の人と仲良くしないでほしい……  しかし、そう思うことが間違っているんだということにも、薄々気づいていて、心の中では葛藤が繰り広げられていた。そんなことを考える自分は醜くて愚かだと。 「ずいぶん大きくなったね、伊織。もう持ち上げるのも大変だ」  稔は愛しそうに伊織を見つめる。伊織は全裸で、稔はスラックスのファスナーだけを下ろし、二人は繋がっている。稔が伊織を抱きかかえて、いわゆる駅弁のような体勢で。  あいも変わらず、伊織は性行為が苦手だった。いくら回を重ねたところで、いや逆に回を重ねるごとに快感が増し乱れ方も激しくなり、それによって自己嫌悪が倍増してしまうだけなのだ。 「伊織はいつも辛そうにしているね……こんなことするの、キライ?」  嫌いだ、しないで済むならしたくない。 言ってしまいたい。けれど先生はこんなことするの好きなんだ。嫌いだと言ったら、先生は僕を嫌いになってしまうかな……  しばらくの間の後、伊織は小さく首を横に振った。 「あれー?みのりーん」  隣の美術室から声がした。またも生徒が遊びにきたようだ。稔は準備室まで探しに来られたら大変だからと、大急ぎで伊織から抜いたものを下着にしまい込み、ファスナーを上げながら美術室に消えた。素っ裸のまま一人残される伊織。隣からはワイワイと楽しそうな談笑の声が聞こえる。そこに伊織は、入れない。  ああ、嫌だな。帰ろう。  服を着て、帰り支度を整え、そっと準備室を出た。

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