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第7話

今朝の経済新聞では、TAGという会社が電力の研究、開発をしている企業とM&Aを成立させた、と一面で大きく報じている。 少し調べたらわかることだが、ここの社長は現総理大臣の親類筋に当たる。 利害関係がないわけなく、要するに、次は電力関係の企業に要注目…ということだ。 こういう日は本来なら銘柄選びにも力が入るはず、なのだが。 朝、目が覚めると体がだるくて重い。 元々寝起きのいい方ではないが、このだるさ、普段の比じゃない。 ーー来たか。 はぁ、と憂鬱になる。 食欲も意欲もなく、欲のほとんどが性欲にまわされるような一週間。 ぼくの発情期は不規則で、今回は前回から約4ヶ月経っている。 来なければ来ないでありがたいのだが、この期間の長さが前回からの間が長いほど、そのときの発情期が酷くなる傾向があるので、来ないからいいと一概には言えない。 とりあえず冷蔵庫にあるゼリー飲料を口にしてから抑制剤を飲み、またベッドへ戻る。 ああ、今度病院に行かなきゃ、イヤだな…。 とはいえ、病院で処方してもらわないことには抑制剤は手に入らない。 ぼくが飲んでいるものは、あまり強くないもので、副作用が殆どない代わりに抑制力も低い。 強いものを飲むと吐き気がとまらず、苦しい思いをしたことがありそれから仕方なくこのタイプを処方してもらっている。 株は、一部、優待目的のものは長く持っているものもあるがほぼデイトレ。 急な発情期に困らないようにしている。 発情期にはとても取引をする気になれない。 当然今日もそれどころではない。 「んっ…」 下半身が熱を持ってくる。 この時期は、前もだが、後ろが疼いてたまらない。 「あっ、んっ…」 自らの指で解していく。 ぬるぬるした感じが、イヤな気持ちにさせるのに、体は快感に善がる。 「っくっ、は、…あ…あっ」 そういえば、先日三角くんに色々されたときは、ひたすら気持ちよくて、こんな不快な気持ちはなかった。 ああ、また、触ってほしい… そう、こんな風に… そんな風に想像しながら、自分で自分のいいところを責めて、前はもう完全に屹立している。 もう、ただの変態みたい… そう後悔をしても、生理現象には逆らえない。 いや、もしかして、そう言い訳をして、自分の本性はこっちの方なのか、とすら思う。 「んっ、んっ」 後ろから指を抜き、今度は大きくなったものを右手で扱いていく。 気持ちいいところを、遠慮なく。 はぁはぁ、と息が荒くなる。 あ、くる…! そう思った瞬間、びゅ、と白濁した液体が跳ね出る。 はぁはぁ… 息を切らして、一瞬呆然となるも、すぐにティッシュで拭き取って、生命にはなれないたくさんの精子を捨てる。 はぁ、はぁ、はぁ… 徐々に呼吸が整ってくる、が。 こんなもので治まる性欲ではない。 こんなもの、これからやり過ごさねばならない地獄の一週間のほんの一部。 自分でしては、自己嫌悪に陥る。 さっきは思わず、三角くんのこと想像しちゃった… と、思ったのがいけなかった。 また、体が熱くなる。 そんな調子だ。 喉が異常に乾くが、食欲はあまりないのでこの一週間は野菜ジュースやゼリー飲料、栄養ドリンクなど、そういうもので過ごす。 だから、冷蔵庫にはそういうものが大量に準備してあって、野菜とか、普通の食品はあまり入っていないのだ。 以前三角くんが冷蔵庫の中を見て「えっ、なにこれ」とどん引きしていた。 当然、出前も取らない。 それがよくなかったのかもしれない。 4日目に部屋のインターフォンが鳴った。 マンションの入り口、ではない。部屋の、だ。 「静さん、…いる?」 はっとする。 よかった、本当によかった、三角くんが合鍵持ってても、いきなり部屋に入ってくるような不躾な子じゃなくて…! 重たい体を起こして、ドアに近づく。 「ごめん、三角くん、絶っ対に入ってこないで」 そう強く告げる。 え、っとショックそうな声が聞こえる。 ごめん、でももう、声だけでイきそう。 それくらい切羽詰まっている。 「このところ注文もなくて…」 「ごめん、三角くんが悪いんじゃないんだけど、今日は帰って」 「どうかし…」 「発情期なの!こんな姿見せたくないの!」 余裕がない。彼の言葉を遮る。 一瞬の沈黙。ドアの向こうで彼はどんな顔をしているんだろう。 「あ、そっか、ごめん…」 「…こっちこそ…」 「あ、それで、オレ思ったんだけど」 「何?!」 もう、早く帰って、お願いだから!! 「オレたち、連絡先も知らなくない?」 「…あ、ああうん、そうかも…」 なんとなく出前で毎日顔を合わすから必要性を感じていなかった。 「オレの番号伝えるから、何かあったら連絡して」 「わかった、ちょっと待って」 “三角くん”と書いて、言われた番号をメモする。 ぼくの番号も伝えると、「本当に、何かあったら連絡してね」と言って帰っていったようだった。はあ、もう、ほんと限界… メモをテーブルに置いて、そのままトイレにでも向かうかとしたとき、ドアがコンコン、とノックされる。 「…三角くん…?」 コンコン、コンコン。 「え、なに、もう、止めて、帰ってってば」 そう言っても、ノックは止まらない。 不気味な気さえする。 普段だったら、こんな短気な行動を取る方ではないが、もう今はいっぱいいっぱいで思わず 「何なの!もう!止めて!!!!」 ガチャ ドアを開けて叫んだ。 そこに立っていたのは、思った姿ではない。 スーツを着たぼくとよく似た面持ちの 「やあ、久しぶりだね」 でも、ぼくよりも全然男らしいーー 「……!い、:斎(いつき)…」 「探したよ、静、兄さん」 ーー弟。

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