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第13話
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「ねーねー、このお皿可愛いねー」
「...」
「あ、あのコーヒー美味しいやつ!後で飲みたい!」
「...」
「ちょっとー、ちゃんと俺の話聞いてる?」
「...」
あのあと九鬼は俺の大声に驚いたのか、素直に立ち上がり部屋を出た。
が、すぐに『洗面所ってどこ?』とヘラヘラしながら戻ってきて...
結局一緒に洗面台に並び、クシャクシャのシャツを脱がせ自分の服を貸して洗濯機を回し、腹の虫を鳴らした九鬼と自分のために簡単な朝食を作り共に食べ...
「あ、泡ついてるよ」
「...」
「ん、取れた」
「...」
ーーーそして今、何故か二人並んで流し台に立っていた。
勿論俺は食器を洗うため。張り付くように横に立つ九鬼は手伝う訳ではなく、キッチンを観察しているだけで、一言話すだけでイライラが募る。
とはいえ早く洗い物は済ませたいのだから仕方ない。染み付いた自分の中のルールだ。
「ねー、主任?コーヒー飲みたい」
「...」
「コーヒー!コーヒー!コーヒー!!」
「~~~っああもう!うるさいな!これが終わったら淹れてやるから大人しく待ってろ!!!」
わーい、と喜ぶ九鬼とため息を漏らす俺。
一体いつになったらコイツに説教できるんだ...
何故こうも上手く行かないのか。
洗い物を済ませたら次はコーヒーを淹れる、目覚めてから今に至るまでの行動は、まるで九鬼の世話をしているようなもの。
棚に置いてある貰い物のコーヒー豆に手を伸ばし、それをコーヒーメーカーにセットする。しばらくすれば二人分のコーヒーが出来上がる。それを待つ間、どうにも我慢が出来なくなって換気扇を付けた。
いつもなら豆の薫りを楽しむ時間なのだけれど、九鬼に対するストレスを煙草で誤魔化そうとしたのだ。
家の中で吸うことは極力控えていたはずなのに。
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