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第15話

「主任って...優しいんだね」 「...一応お前は部下だからな」 「でも...主任も俺が辞めればいいって思ってるでしょ...?」 「......辞めたくないなら真面目に働けばいいだろう。何故自分で自分の評価を下げるようなことをするんだ?」 スンスン、と鼻を鳴らしながら涙を拭う九鬼は、へへっと笑いながらその場にしゃがみこんだ。 「俺...一人が苦手なんだ。特に夜とか朝起きた時とか、誰かと一緒じゃないと苦しくなる...」 「はぁ...?」 「おかしいでしょ?」 「...」 それが仕事とどう関係している...?と言いたいのをグッと堪えて九鬼が話すのを待つ。 ーーーコイツの告白はつまりアレだ。 一人で夜から朝にかけて過ごすのが苦手、だから声を掛けたり掛けられたり、そんな都合の良い女と過ごすうちに噂が立ったとかそんな所だろう。 「...ダメだと思ってる、こんなの。でも一人じゃ眠れなくて、朝が来て、仕事して、それ繰り返してたらやりたかった仕事が上手く出来なくなって...」 そのあと九鬼が話したことは、予想したことそのままだった。 「特定の相手はいないのか?」 「...いない」 「お前のことだから女に不自由はしていないんだろう?なら一人とまず付き合ってみればいいじゃないか」 「...そう...なんだけどね...。」 「出来ないのか?」 「......ずっと、片思いしてる人が居るから...出来なくて...。」 『片思いしてる人が居る』 そう言ったあとの九鬼はひどく落ち込んで見えた。 そしてその姿は忘れたはずの過去の記憶を引き戻す。 弱った部下に自分が取った行動、そしてそのあと抱いた感情。 ...その先にあった、苦い思い出。 二度と繰り返すことなんてないと思っていたのに、コイツを家に入れてからおかしい程にあの頃と重なってしまう。 はぁ、と深く息を吐いて俺はある提案をした。 待ち望んだ新しい部下に、生意気で問題ばかりの部下に、最後のチャンスを与えるための上司としての行動だ、と言い聞かせて。

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