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第23話

「そーいや陣、例の問題児は最近どーなの?」 「あ、それ俺も気になってたんだ。えーっと...何て名前だったっけ?珍しく陣がキレてた新入社員くん。」 一通り弥生と暁斗の惚気話が済んだ頃、二人は俺に話を振った。 前回集まった時は九鬼の言動にイライラしていた頃。弥生も九鬼の噂を耳にしていたらしく、俺は盛大に愚痴を吐いたのだ。 「名前は九鬼だ。...そうだな。今はだいぶ落ち着いてきたと思うぞ。仕事も真面目に取り組むようになったし...。」 「確かに前みたいな女遊びの噂は最近聞かねーな?」 「でもどうやってそんな問題児くんを更正させたの?陣、アイツは辞めるべきだー!とか言ってたよね?」 二人の惚気話が中心ではあるものの、こうして俺にも話を振ってくれる親友たち。 もうずっと恋人の居ない俺の話すことは仕事や趣味の料理のことが主だが、ずっと聞き役にさせないという二人の優しさ。 そんな二人に軽くこの1ヶ月の出来事を話すと、弥生も暁斗も驚いたように目を丸くした。 「まさかそこまでするとは...。陣、お前ほんっっとアレだな、世話好きというか...」 「本当にね...。いくら部下とは言えよくやれるよ。」 弥生が煙草に火を点けたタイミングで、俺と暁斗も同じように煙草を咥える。 三つの異なる香りと煙が交差する中、二人は俺に『部下思いだけどお人好しすぎないか』と繰り返した。 「そもそも陣って九鬼くんの事嫌がってたよね?家に入れるのは大丈夫だった訳?」 「最初は酔って仕方なくだったんだ。...それにまぁ、寝るだけしな。」 「でも...ねぇ?俺ならよっぽど気に入った部下でも一晩二晩が限度だわ。」 「俺も弥生と同じだよ。...あ、もしかして実は九鬼くんのこと実は気に入ってたとか?」 「...別にそんなことは...」 「あ!!もしかしてもしかして、実は九鬼のこと好きだったりする!?!?」 「はぁ!?」 「なぁなぁ暁斗、暁斗もそう思わねー!?」 「ちょっと思ってた。陣がそこまで出来るって、もしかしたらの可能性も...」 俺より強い酒を呑む二人は酔いが回ってきたのか、声のボリュームを上げて興奮し出した。他に客がいないから良いものの、それは少しうるさいしそもそも俺は九鬼を『特に気に入っている』訳でも『好き』な訳でもない。 むしろ二人からそんなことを言われて驚いてしまったくらいだ。

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