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第2話

Ψ Ψ Ψ ニンゲン界には―――マ界と違って色々な決まり事がある。 【ガッコウではジュギョウを受けなければいけない】、【キョウシに逆らってはいけない】、【決められたジカンにガッコウに行かなければいけない】―――などなど、様々な決まり事があり、来たばかりの頃はオレもキッスも大層困惑してしまった。 それを何とかするために、オレとキッスは互いにマリョクを使い―――【取り巻き】を作りあげてニンゲン界に関する色々な事を教わったりしていたのだ。 マ界にいた頃は―――『ニンゲン共は単純だ……マリョクを使えば簡単に操れる』と下に見ていたオレだったが、いざニンゲン界に来てみれば色々とニンゲン達に関する複雑さを学ぶ機会に否が応でも遭遇してしまう。 Ψ Ψ Ψ ドンッ………… 「根室―――お前、木須くんとは随分と親しいみたいだけど……何なんだよ、お前……ベタベタと木須くんにくっついて―――邪魔なんだよ!!」 「……っ…………!?」 授業が終わるなり、オレはキッスの取り巻きであるニンゲン達に取り囲まれて人気のない場所へと強引に連れて来られていた。 ニンゲン達に関する複雑さ―――それは、ニンゲンには負の感情というものがある事だった。マ界には―――そんな面倒な感情を持つヤツらはいなかったし、オレやキッスがマリョクを発揮してもイザコザが起こるなんて事はそうそうなかった。 少なくとも―――今のクソ王子(オレらをニンゲン界へ追放したヤツ)がそういった命令を起こさなければ、オレは今でもキッスを引き連れてマ界で好き勝手色々なヤツらを食いつくして暴走してしまっていたに違いない。 (それにしても……ニンゲンがこんなに面倒で厄介で―――恐ろしい生き物だとは……思わなかった……キッスが側にいなくなると――こんなにも豹変するとは……っ……) あのクソ王子のかけた【悪戯心による同族好意協奏曲】という能力は―――基本的にはオレとキッスが共にいる時でないと発動しない。キッスがいる時にいい顔をしていたい取り巻き達はオレが1人でいる時にちょっかいを出してくるため、【悪戯心による同族好意協奏曲】の効果が切れている時なのだ。しかし、そうとはいっても取り巻き達がキッスを好きな事には変わりがないのがこの能力の厄介な所だ。 マ界にいた頃は大したことがないと思っていたニンゲン達に悪意をぶつけられるのは―――とても恐ろしい事だとオレは知ることが出来た。 しかも、キッスの取り巻き達はみんな体育会系で野蛮な輩のため―――今みたいに壁際に追い込まれ、ぎろりと鋭い目付きで睨まれてしまうとガタガタと体が自然と震えてしまう。むやみやたらにマリョクを使わないとオレ自身が固く決めたため、オレの能力であるチャーム(魅了)で目の前にいる輩を骨抜きにしてしまう訳にもいかない。 「き……木須くんとは……っ……別に―――何でもないから……っ……」 「嘘つけ……っ……だったら何で木須くんが――お前に抱きついてたんだよっ……適当な事を言ってんじゃ……っ……」 ぐいっ………… と、キッスの取り巻きの内でも人一倍面倒くさいヤツ――サトウが怯えるオレの胸ぐらを掴んだ時―――、 「……あ……んっ…………!?」 薄目の白生地シャツの上から―――サトウと手先がオレの乳首をかすって無意識の内に変な声が出てしまう。おそらく、オレの顔を殴ろうとでもしていたサトウの手がピタリと止まり―――僅かに赤く頬を染めてしまって両手で胸元を隠すようにしているオレの方へと一斉にギラギラとした嫌な視線が集まるのだった。

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