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第8話

スプーンに乗った物を口に入れた瞬間、食べ物の温かさにボロッと涙が溢れた。 「髪が邪魔だね。誰かが置いていったピンだけど、着けないよりましかな」 翔くんのお父さんが俺の前髪を横に退けて、何かで留めてくれた。 視界が開けてお皿の上の物がはっきり見える。 「すごい綺麗な眼だね」 「だ、大丈夫??熱かったか?」 翔くんは俺の涙を見てオロオロとしはじめ、翔くんのお父さんは俺の瞳を見て微笑んだ。 俺は慌てて下を向いた。 他の子は俺の眼の色が気持ち悪いと言うし、母さんも俺の顔を見ると必ず顔を歪める。 「ひぅ…」 「誰も君のご飯を取らないからゆっくり食べな」 ぽんっと頭に手が乗ったことに驚いて、俺は首を縮める。 叩かれるのかと思ったのに何度か頭をぽんぽんと撫でられ俺は恐々顔をあげる。 翔くんのお父さんは金髪で怖いけど、笑った顔はとっても優しくて少し息を吐いた。 翔くんはまだ心配そうにしていたが俺の様子をじっと見ている。 「ほら。冷めないうちに食べないと」 「熱いから気を付けてね!」 もう一度手を取られて強制的にご飯をすくいあげされられる。 いつの間にか横に来ていた翔くんがスプーンの上のご飯にフーフーと息を吹きかけてくれた。 そんな事をされた事がなかった俺はびっくりしたけど、翔くんの言葉に小さく頷く。 ゆっくりではあったがご飯を食べ始めると二人からはほっとした息がもれた。 「もういいの?」 「あ、ありがとうございます!とってもおいしかったです」 翔くんのお父さんに聞かれて俺は何度もうんうんと頷いた。 慌ててお礼を言うとタバコをシンクの上にあった灰皿に押し付けてくしゃくしゃになった千円札を渡される。 意味が分からずその千円と翔くんのお父さんを見比べた。 「うちも貧乏だけど、困った時はお互い様って言葉があるんだよ。お腹がすいたときはこれでご飯を食べな」 「よっかたね!」 翔くんが嬉しそうに俺の頭を撫でてくれた。 その温もりにまたポロポロと涙が溢れてくる。 大人も子供も皆俺の格好を見てヒソヒソと言うだけで、こんな風に手を差しのべてくれなかった。 俺は千円を大事に大事に折り畳んでズボンのポケットに入れる。 「ありがとうございます。ぼくどうやったら…お母さんを助けられますか?」 俺は肩口で涙を拭ってぐっと顔をあげる。 どうやったら自分が母さんの役に立てるのか思いきって翔くんのお父さんに聞いてみた。 俺の回りには頼りになる大人が居なかったし、優しくしてくれた翔くんのお父さんはとても信頼できる大人に思えた。 「うーん。君のお母さんも俺と一緒で色々苦手なのかもしれないよ?家事とか手伝ってみたらどうかな?」 「俺も洗濯機回したりするんだよ!」 翔くんのお父さんの言葉にそれが救いの言葉の様に聞こえた。 翔くんも後押しするみたいに自分のしている事を教えてくれたので、俺の中ではその言葉が確信に変わる。 その言葉を支えに俺は家の家事を完璧にこなそうと努力した。 何度も失敗したりしたけど、俺が頑張ればまだまだ叩かれたりすることはあったけど母さんのイライラは少し改善していった様だった。 何度か翔くんのおうちで料理の練習をさせてもらった事もあったし、お父さんの圭介さんに食べてもらった事もあった。 母さんが再婚が決まってから団地から引っ越してしまって、いつの間にか圭介さんに貰った千円も母さんが使ってしまって長いこと二人の事は忘れていた。 “圭介”も“翔”もよくある名前だからまさかあの二人な訳ないだろうと気持ちに蓋をして俺は自分のベッドへ潜り込んだ。 ちゅっ、ちゅぷ、くちゅ 水音と共に下半身が温かいし、ぞわぞわとした気持ちよさが背中をかけあがる。 「うーん?」 命くんをベットに寝かせ、自分がいつもの使っているベットで寝たはずなのだが下半身の違和感に目が覚める。 「んー。んん。ちゅう」 「えぁ?み、命くん!!」 布団が盛り上がっていたので、それを勢いよくめくると命くんが俺のモノをキャンディの様に美味しそうに舐めている。 「命くん!は、離して!」 「えへへ♪だめぇ」 俺は命くんの肩を押して、引き離そうとするが何処にそんな力があるのかと思うほどびくともしない。 「ちょっ!うっ…」 ぢゅぅぅぅ 先端を強く吸い上げられると、俺は呆気なく命くんの口の中に出してしまった。 「えへへ。いっぱいでたねぇ?“パパ”はまだ出るよね?ぼくとまだいっぱいしよぉ?」 命くんの顔を見た瞬間、俺はぞっとするほどの恐怖を感じて固まってしまう。 命くんの目の焦点は合っておらず、どこか遠くを見ている。 口だけは弧を描き笑みをたたえている。 肩が大きく開いた服からは今日治療を受けた大きなガーゼがのぞいている。 俺が掴んだせいで傷が開いたのかうっすらと血が滲んでいる。 俺はそれを見て慌てて手を離すと、命くんにこれ幸いとパジャマの下を奪い取られた。 「今日のパパは可愛いね?」 命はくすくすと笑っていて、その声が尚更俺の恐怖心を掻き立てる。 しかも俺の事を“パパ”と呼んでいる。 弱音を吐いていた時に口からぽろりと出た“パパ”で無いことは確かだった。 「みこともう大丈夫だから、いれちゃうね?」 「え!やめよ?命くんだめだよ!」 裾の長い上着からのぞく白い足にもガーゼや包帯が巻かれている。 下手に身体に触れると怪我に触るかと思って抵抗するのも躊躇ってしまう。 「もしかして、パパはじめてなの?」 「何言って…」 俺の顔がぼんっと火を吹くかと思うほど赤くなっているのが自分でも分かる。 頬が熱い。 それを見た命くんはまたくすくすと笑いだす。 「みことで、どーてー卒業しちゃお?大丈夫。ぼく男の子だからにんしんしないし、いっぱいびゅーびゅーしても大丈夫だよ」 「え?あっ、んんっ」 身体を屈めた命くんに唇を奪われる。 小さな舌が俺の口の中を掻き回していく。 「んんんん?」 「ゆだんたいきき?」 それを言うなら油断大敵だよって思うものの、今はそれどころではなく焦る。 いつの間にか俺のモノが温かいものに包まれている不思議な感覚がする。 「あはっ。パパのがお腹の中で大きくなった」 「え?あぁ…」 裾の長い服のおかげて結合部分は見えないが命くんが上半身を起こして、お腹をさすりながら嬉しそうにしている。 俺はその光景が信じられずに心臓がバクバクと早鐘を打つ。 「んんん~」 「ひっ!」 俺が呆けている間に、腹に小さな手を置いて命くんが腰を引き上げる。 悪寒に似た快感が背中にぞわぁと広がり、思わず声が出てしまう。 「あっ、あっ、あぁ、あはは、気持ちいい」 「み、みことくん…」 腰を勝手に上下させている命くんの目からは涙がぼろぼろとこぼれていた。 口では気持ちいいと言っているが顔は悲壮感でいっぱいだ。 肩口のガーゼの血の染みは少しずつ大きくなって行くのに、俺は与えられる快楽に身を委ねている事しかできなかった。 「命くんだめ!止まって!」 「んっ、んん」 どんどん一方的に追い上げられるのを止めたくて、命くんの足を掴むが命くんは止まってくれない。 俺は絡み付く熱い肉の感触に手が震える。 命くんの内腿が快感からなのかビクビクと痙攣しはじめ、腹の上の手も俺の上着をぎゅうと握りしめている。 「命くん!出ちゃう!出ちゃうから止まって!」 「いいよー?いっぱい出してよ」 「待って…んん!!」 「ふふ…お腹やけどしそう」 又しても呆気なく逝ってしまった俺は、罪悪感でいっぱいになる。 いくら命くんが主導権を握って居たとしても止まれなかった不甲斐ない自分が嫌になる。 「いっぱい出た…ね」 「えっ!命くん!」 俺のものから腰をあげた命くんは糸の切れた人形の様に前のめりに倒れてくる。 それを慌てて、受け止めると命くんはすぅと寝息を立てている。 頬には涙の跡がついており、それを見ると自分のされた事も忘れて胸を締め付けられる。 「ふぁ~」 しかし寝ていたところを無理矢理起こされたかたちの俺も、行為の疲れからか睡魔に勝てず命くんを抱き締めたままそのまま寝てしまった。

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