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番外編 ちょっと未来の話

人の成長とは早いもので、俺より小さくて可愛かった後輩も今では俺より大きく逞しくなってしまった。 「翔さんまだですか?」 「まだだよ」 俺がタブレットでゲームをしている後ろでは俺の腹に腕を回し、肩に顎を乗せて犬みたいに待ってる元後輩が居る。 前までセンパイ、センパイと子犬の様だったのに少し会わない間に身長も俺よりもすっかりでかくなってしまった。 「イチャイチャしましょうよ…」 「しません!」 俺の背中にグリグリと頭を擦り付ける相手に、俺はぴしゃりと言い放ったがまったく効果はない。 高校の後輩だった理は、俺より1つ年下で控え目な性格の大人しい奴だった。 俺が高校3年の途中に、たまたまバイト先が一緒になって実は子供の頃に近所に住んでいてよく遊びに来ていた女の子だと知った。 女の子だと思っていたのが実は男だった事にショックを受けたが、子供の頃の理は髪が長く親父が気紛れで着けた可愛らしい髪留めをしていたのでずっと女の子だと信じていたのも不思議でもないだろう。 しかし、今は何の縁なのかそんな後輩兼初恋の相手と一緒に住んでいたりする。 突然学校もバイトも辞めた理と再び再開したのは、知り合いでもある美世さんの家に理が引き取られた時だった。 その時は身長も伸びてすっかり大人のなりになっていたが心を病み酷い状態だった。 物音や人の沢山居る場所に怯え、身動きが取れなくなる。 そして、恐怖からなのか頭を押さえて身体を小さくして震える。 その時に比べると今は随分と症状は良くなったものの、常に俺にべったりなのだ。 「センパイ…この服もイキリヲタみたいでダサカワイイです」 「は?殴るぞ?」 しかし、最近の理は全く可愛くない。 俺が気に入って買った服の良さが全く分からないのが嘆かわしい。 しかし、たまに呼び方が“センパイ”に戻るのは狡いと思う。 ムカついたので頭を軽く殴るとえへへと笑い声があがった。 こういうところは年下っぽくて可愛い。 「そう言えば、あの外人が作ったお菓子食べないと」 「あー。命くんは甘いもの食べなくなったからこっちにまわってくるんだよなぁ」 「ははは。美世のお義父さんが嘆いてましたよ」 「確かに、玲から甘いもの来なくなったっていってたな」 理は俺を更にぎゅっと抱き込むと、思い立った様に動き出す。 俺も立ち上がって台所に理と他愛ない話をしながら向かう。 俺の親父や里親である美世さんを理は“お義父さん”と呼んでいるのだが、どうも俺の継母の玲とは反りが会わないのか玲を“あの外人”と呼んでいる。 当の玲は気にしていないし、むしろ嫌味で返しているから俺がどうこう言うのも変なので構わずにしておいている。 「命くんがこれ食べたらお腹壊しちゃいますね」 「命くんは本当に姿だけは子供なんだけど…中身おっさんだからなぁ」 理が冷蔵庫から出してきた生クリームたっぷりのカップケーキを見ながら呟いたので、俺もついつい頷いてしまう。 一応義母にあたる命くんの事は小さい姿のせいか名前で呼んでいるのだが、本人に言わせると何でお義母さんと呼んでくれないのかと頬を膨らまされている。 容姿も仕草もいつまでたっても子供みたいな命くんの事はなかなか大人として見られないのだ。 しかし見た目は子供だが俺と同じ歳なのには未だに驚かされる。 「センパイは本当に小さい子好きですね」 「は?」 理に大きなため息をつかれ、俺は自分の頬をさする。 玲や美世さんに言わせるなら、俺はロリコンと言うものらしい。 実際のところはじめては命くんだったし無理矢理とはいえ夢は叶った訳だ。 「俺も可愛いですよ?」 「いや…お前もう俺よりでかいから可愛くない」 理が対面式のキッチンで可愛らしくポーズするが全然可愛くない。 180近くある男が顎に手を当ててポーズしてても可愛いもくそもあるか。 理は俺の対応を気にしてないのか飲み物の準備をはじめている。 「食後の運動に、どこかでかけません?」 二人でティータイムを楽しんだ後、理がそう言って来たので俺は軽く頷いた。 就職して実家のマンションから職場近くのマンションで暮らして随分たつ。 こうやって腹ごなしに二人で近所の公園やスーパーに行くことがよくあるので、今回もそれだと思っていた。 「ちょっと待ってて!」 「なんかあるのか?」 マンションのエントランスに降りてくると、理が駐輪所の方へ消えていった。 自転車は所有してないはずなので、俺は頭に疑問符が浮かぶ。 すぐに戻ってきた理に俺は目を見開いた。 「すっごく探したんですよ」 「嘘だろ…」 理が持ってきたのは見覚えのあるスクーターだった。 高校時代に入学祝いとして親父にプレゼントされた型も色も全く同じ物だ。 友人には驚かれたが、元ヤンの親父が買った大型のスクーターは中古という事もあって調子が悪くなるのと同時に、維持費等の関係でなくなく手放してしまった。 今は廃盤になった商品なのに、理はそれを探してきたのだろう。 「高校の時、バイトの帰りが遅くなった俺を翔さん送ってくれたじゃないですか。俺、どうしてももう一度翔さんとスクーターに乗りたくて探したんです」 理に言われてそんな事もあったなぁと思い出す。 あの時は二人で少し寄り道をしてから帰ったんじゃなかったかと記憶を遡る。 「あの時は海でしたね」 「よく覚えてるな」 そう言えばあの時はベイエリアに行ったんだったと理の話を聞いて思い出した。 あの時は特に何かしたとかではなく、学校の事やバイト先の話をした気がする。 「俺、あの時昔優しくしてくれた男の子が翔さんって分かって凄く嬉しかったんです」 「俺はちょっとショックだったけどな…」 理が前髪を留めている髪留めを撫でるのを見て、あの時の事を思い出した俺は苦笑いを浮かべた。 シートの下からメットを取り出したのを渡されて、それを素直に被る。 「翔さんが運転してくださいよ」 「マジか!」 理がいそいそとスクーターの後ろに座るので、俺は久しぶりにスクーターに股がった。 懐かしくてハンドルを撫でると、理がまたしても腹に手を回してくる。 落ちない為だろうが、高校時代に比べるとやはり大きくなった手に複雑な思いになった。 「で、何処に行くんだ?」 「翔さんの行きたいところならどこでも!」 こう言うところがずるいなぁと思う。 理はハーフ独特の整った顔立ちをしているが行動はまるっきり甘えん坊の大型犬だし、年上である俺を立ててくれたりもするので結局色々許してしまうのだ。 「なら行くか!」 俺はキーを回してエンジンをかける。 ギアを回してスクーターを発進させると理が俺に回している手の力が強くなった。 + 「すっかり遅くなっちゃいましたね」 散歩と言いつつスクーターに乗ってついつい遠出してしまい、家に帰ってきたのは日がとっぷりと落ちてからだった。 食事も済ませてきたので、後は風呂に入って寝るだけだ。 「翔さん運転お疲れさまです。背中でも流しましょうか?」 「んー?」 久々の運転にかなり疲れてしまった俺は、理の話を話し半分に聞いていた。 何気なく頷いてしまったので、理は嬉しそうに俺をソファーに座らせて浴室に消えていく。 美世のお義父さん…パパさんのご厚意で俺の職場から近いファミリー向けの部屋を格安で借りているので、風呂は広いし部屋数も多い。 「翔さん?」 俺がうとうとしているうちに、準備が済んだのか理が近付いてきた。 ぼんやりと目を開けて見ていると、嬉しそうに俺を抱き上げてきたので素直にそれに従う。 「熱くないですか?」 「うん」 かいがいしく世話をされて、俺もまた眠くなってくる。 頭を洗われ、湯槽に理と一緒に浸かって後ろに体重をかけるとまた俺の腹に手をまわしてきた。 どうも理はこの体勢が好きな様だ。 「翔さん石鹸のいい匂いしますね」 「ん?」 理は首筋に顔を埋めてくんくんと俺の臭いをかいでいる。 時折当たる鼻息がくすぐったい。 「今日は楽しかった」 「俺もです!!」 何気なく手を後ろにやって濡れた髪を撫でてやると嬉しそうに返事をしてきたので、俺は満足して大きく息を吐いた。 「そろそろ上がりましょうか」 「そうだな」 身体が大分温まってきたので先に脱衣所で身体を拭いていると、遅れて理が上がって来た。 ファミリー向けのマンションなので、脱衣所もそこそこ広さがあって、男二人でもあまり狭さは感じない。 「さと…ひっ!!」 後ろに理の気配を感じて振り返ろうとしたところで、腰をガシッと掴まれて尻に熱いものを感じる。 いきなりの出来事に俺は抵抗らしい抵抗もできず、そのまま壁に手をついた。 「翔さんの孔、身体が温まったお陰で緩んで入れやすくなりましたね」 「ちょ…お前…いきな…ひぃ」 俺が後ろに手を伸ばそうとしたところで腰がゆるゆると動き出す。 動かれる度にぷちゅぷちゅっと小さく水音がしている。 「うぁっ!!」 「あ、気持ちいいとこ当たった?」 また腹に手を回してきたかと思った矢先、背筋がぞわぞわとして膝から崩れ落ちそうになった。 それを理に支えられ耳元で笑われてしまえば悔しいやら気持ちいいやらで頭が回らない。 最近ではガツガツ突かれるのではなく、ゆっくり堪能されるみたいに動かれるので気持ち良さが長く続くから気が付けば理に主導権を握られてしまっている。 「翔さん鏡に写ってますよ?」 「う…そ!!」 理に言われて視線を移すと姿見にばっちり俺達の姿が写っている。 驚いた俺は身体に力を入れてしまって理を思いきり締め付けてしまう。 「翔さんってちょっとMですよね」 「そんなこと…あっ」 理がからかいつつ耳の後ろにキスしてくる。 クスクス笑う声や理の息にも身体が勝手に反応してしまって壁に爪を立ててしまう。 キュ~ン 扉の外から鳴き声が聞こえる。 俺は驚いて動きが止まるが、理はゆるゆると腰を動かしてくる。 「ミコさんが来ちゃいましたね」 「さとる…やめっ」 “ミコさん”とは理が連れてきた犬で、コーギーのメスで俺達の小さな家族だ。 出掛ける前に寝ていたのでエサと水だけ用意して出掛けた。 その小さな家族が俺達を心配して風呂場の前にきてしまったのだ。 俺は焦って口許に手を当てて聞こえない様にするが、扉を前足でカリカリと引っ掻く音がする。

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