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番外編 ちょっと未来の話2
「センパイ…そんな力一杯締め付けないでくださいよ」
「うぁぁ…ひっ…きぬくなぁ!!」
ゆっくり腰を引かれて内臓が全部引きずり出されるような感覚に背筋に悪寒が走った。
ちゅぽんっと間抜けな音を立てて引き抜かれた瞬間、そのまま壁伝いに崩れ落ちる。
「もう少し待っててくださいね」
理はしゃがみこむと俺の頬に軽くキスをして、バスタオルを腰に巻いて浴室を出ていった。
扉の前では“ミコさん”に話しかけている理の声が聞こえるし、ミコさんが甘えている鳴き声が聞こえる。
声がどんどんと遠ざかって行くので、理はミコさんをケージに入れに行ったのだろう。
ミコさんは賢いので俺達の邪魔をしたことは無いが、念のためにケージにお帰りいただいたみたいだ。
身体の熱を冷まそうと二の腕に手を当てる。
腕を擦るために手を上下にさせると、たまたま腕が乳首に当たってしまってビクンと肩が跳ねる。
「くそ…」
さっきの余韻のせいで軽く達してしまった。
俺は小刻みに痙攣する身体が腹立たしくて壁に爪を立てる。
壁紙が痛むガリガリっという音がしたが俺はそんなことを気にしてられなかった。
なんとか立ち上がってやろうと床に手をついたが、膝が笑ってしまって足に上手く力が入らない。
「しょうさ~ん。あれ?どうしたんですか?」
「なんでもない!!」
理が浴室に戻って来たときには、寝巻きに使っているジャージを着ていた。
上半身は何も着ていなかったが綺麗についた筋肉が男らしいくて悔しい。
「翔さん風邪引いちゃいますよ?」
「誰のせいかな?」
「えー?」
理は床に座り込んで動けない俺に、戸棚から出したタオルを被せ再び髪を拭きはじめる。
本当は自分のせいで俺が立てないのを分かっている癖に、とぼけて楽しそうなのが気に入らない。
「ドライヤーは後でかけましょうね」
髪の水気を大まかに拭った理は上機嫌で俺の頭に顔を埋めてくる。
いくら水気を拭いたとはいえ、生乾きの髪に顔を突っ込んだら顔が濡れるだろうにそんなことは気にならないのか鼻息がくすぐったい。
「おい…くすぐったいからやめろ」
「いいじゃないですかぁ」
俺は理を退かそうと肩を押すがびくともせず更に抱き込まれただけで終わる。
そのまま抱き上げられて寝室に連行されて全くもって面白くない。
「こら!服くらいちゃんと着せろ!」
「いいじゃないですか。パジャマ半分こは男のロマンですよ!」
「いや…俺も男だから」
ベットに座った状態でドライヤーで髪を乾かしてくれるのはいいが、手渡されたジャージの上部分しか着ていないので下半身がスースーして落ち着かない。
下のジャージを要求するも、男相手に訳の分からない事を言うので俺は大きな溜め息が出た。
パジャマを半分に分けて萌えるのは女の子相手であって、俺の様な男に対してでは無いだろう。
「翔さんもう寝ましょうか?」
理の意味不明な持論の途中にウトウトしはじめた俺に、理が声をかけてきた。
俺は無意識にこくんと頷いてしまったのか、そのまま横たえられる。
相変わらず理は背中に抱きついたままで何もしてこないので拍子抜けしてしまった。
+
首筋に理の吐息を感じて目が覚めた。
理も寝ているのかすぅすぅと寝息が聞こえるが、時折首筋に唇が当たってくすぐったい。
その行動に寝る前に脱衣所でされた事を思い出して下腹部がうずき出した。
理の腕から抜け出そうとするが、ガッチリと抱き込まれてしまっているので身動きがとれない。
モゾモゾと動いてみるが状況は一向に改善しないし、むしろ理の腕の力が強くなる一方だ。
「理?離してくれ」
「ん~」
仕方ないので、腹に回っている理の手の甲を軽く叩いてみる。
力が少し緩んだので、抜け出そうとしたが理の方を向いただけで終わってしまった。
再び抱き寄せられ、丸まった理の頭が腹の辺りに来て頭をグリグリと腹に押し付けてくる。
全く行動が大型犬じみていて思わず頭を撫でてしまった。
「ちょ!こら!」
俺をホールドしていた手の行き場がなくなったのか、足を掴まれた俺は慌てて理の手を退かしにかかる。
太股から上に上がってくる手は、自然と身体をなぞる様にジャージの裾から侵入してきた。
「お前起きてるだろ!」
思わず叫んでしまったが、理はジャージの裾から頭を突っ込み俺の乳首を捕らえた。
布越しにチュッチュと乳首を吸う音と刺激に更に下半身が反応してきて危機感を感じる。
「ひっ!」
乳首への刺激が無くなった事に安堵した瞬間、痛みが襲ってきた。
噛まれたと悟った俺はジャージの膨らみを殴るが痛みが断続的に襲ってくるだけで一向に止まないいたみに軽い恐怖を覚える。
「理!やめろっ…ひっ、いたっ」
「んー?」
動きが緩んだので、ジャージを捲ってみると理が目を擦りはじめた。
ショボショボとまばたきをはじめ、うっすらと目を開けたところで目の前に俺の乳首を見付けたのかパクリと口に含んだところで俺は拳を振りおろした。
「いてっ!!」
「さーとーるー!!!」
殴った事で目が覚めたのか、殴られたところを擦りながら見上げてくる理の目には涙が浮かんでいた。
しかし目の端に映る自分の身体には歯形やら色々な痕がついていて、あまつさえパンツまで少しふっくらしていたら張本人に当たりたくなるのは当たり前だろう。
当の本人は状況を掴めないのか、俺を見上げて首をかしげている。
そんな仕草が益々大型犬じみていてきゅんとしてしまったのは口が裂けても言えないし、言ったら調子に乗るだけなので黙っていることにする。
「翔さん…おはようございます…朝ですか?」
「ちがう…これは何かな?」
俺の鳩尾位に顎を乗せてへらりと笑った理に一瞬ときめいたが、ぐっと堪えて付けられた歯形を指差す。
理は歯形をまじまじとアンバーの瞳で観察している。
「ん?俺の好きな翔さんのおっぱいですか?」
「おっぱいって言うな!違うだろ!!歯形だよ!は・が・た!!」
とぼけた顔で胸を持ち上げて来たので、今度は平手で頭を叩く。
確かに最近少し身体に肉がついてきたけれど、俺の名誉のために言うとけしておっぱいではない。
おっぱいと言うのはもっと慎ましくて、可憐で孤高なものだ。
「翔さんのも立派なおっぱいですって」
「だからおっぱい言うな!」
理はどさくさに紛れてまた胸を揉み出したので、止めようとしたところで乳首を摘ままれてしまった。
下半身が反応してるのも既にバレバレだろうが、ここで理を許してしまうと示しがつかない。
何とか抵抗を試みるが、無駄足に終わる。
「翔さん本当に乳首弱いですよねぇ」
「う、うるひゃい」
抵抗らしい抵抗もできないまま散々弄くりまわされた乳首はジンジンと痛みに似た痺れが走り、呂律も怪しくなり腰も跳ねる。
理が楽しそうに笑っているのが気に入らないが、今はそんなことより腹の奥が疼いてしかたない。
「お風呂に入ったのに、パンツぐちゃぐちゃですね」
「誰の…」
「えへへ。俺かな?」
分かりきった事を言う理の髪を掴むと、嬉しそうに頬をゆるめるので不覚にもまたきゅんとしてしまって二の句がつげなかった。
今度は下着越しに頬擦りしてきたので、俺は諦めてなすがまま理の行為に身を委ねる。
その後は気が遠くなるほど丁寧に身体をほぐされ、最終的には自分から理をねだるまでグズグズにされた。
シーツを盛大に濡らしてしまったり、身体に無数の痕をつけられたり、最後にスマホで何かしていた様だが俺は全く覚えていない。
「センパイお疲れ様です」
「おぅ」
理に後始末をされつつ俺はぶっきらぼうに答える。
こんな時に“センパイ”呼びは狡いとしか言いようがない。
シーツが新しくなったベットに理と共に横になると大きな溜め息がでた。
理は俺を抱き寄せ首筋にキスをしてくる。
「身体痛くないですか?」
「ん、平気」
なんやかんや言いつつ理との生活や行為を受け入れている俺はやっぱり理の事が好きなんだと思う。
癪だが俺も理を抱き締めてやると、一瞬息を止めた後嬉しそうな声が漏れる。
まぁ、俺が養っていってやらないといけないしこの大きなワンコは俺がちゃんと躾てやらないとなと密かに思った。
「また、美世のお義父さんが喜んじゃうな」
「ん?」
「何でもないです。そう言えば、明後日は美世のお義父さんのところに行きますから、会社には一緒に行けないです」
理が呟いた言葉が上手く聞こえなくて聞き返すと、理はしょんぼりと項垂れる。
理はリハビリがてら俺の勤めている会社で清掃のアルバイトをしていて、時間が合えば一緒に出社しているのだ。
アルバイトなので勤務がそこまで多く無いせいか、こうやって時々パパさんに呼び出されて仕事の手伝いをしているらしい。
「ふーん。今回は何するんだ?」
「新作の販売会議です。モニターもしますよ」
パパさんはアダルトグッツのネットショップをしていて、細かいレビューや際どい使用例動画等が売りの人気ショップだ。
以前は命くんや、玲が登場していた動画に理も登場するようになり、理もそこそこ人気があるみたいだ。
実はまだその動画を見たことがないのだが、本人曰く良い出来らしい。
「今回のもえげつないんですって!」
「嬉しそうだな…」
「だって翔さんバリネコたし、俺だって無性に後ろに欲しくなるときもありますって」
またしても良く分からない事を話す理に俺は頭を撫でてやった。
理が楽しそうならまあ良いだろう。
本当に理は俺にベッタリなので、俺が家計も支えていかねばならない。
「まぁ、俺がちゃんと稼いできてやるから理は無理するなよ」
「あ…ソウデスネ」
しばし間が空いたが、理が同意したので俺は大きく息を吐いて枕に頭を預ける。
少し腰はダルいが疲労感に瞼がどんどん重くなってきた。
理が再び背中に貼り付いてきたところで何ともいえない満足感に意識を手放した。
「もうちょっと旦那気取りで居させてあげます。自分が嫁の自覚ないですもんね」
夢の世界に旅立つ前に理が何やら言ってるけど、それを理解しないうちに意識は白い靄に包まれていった。
俺はこうやって後輩と幸せな日々を続けていくのだった。
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