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★とある酒場の看板娘(本当は男)と、とある男の後日談★

* * * 「あ、あの、このギルドに出向くのは初めてなんだけれど……少し聞いてもいいかな?」 「はい、ええっと……初めてなのでしたらこの書類に必要事項をお書きくださいませ、ませ。登録が済み次第、ご質問にお答えします、ます!!」 ギルドの受付を担当していて変な口調が特徴的な浅黒い肌のダークエルフの少女は、嫌な顔ひとつせずにティーナを出迎えてくれた。もしもレインが生きていれば、ちょうどこの子と同じくらいの年齢だ――などと思いつつ、親切な対応をしてくれたためホッと胸を撫で下ろす。 今まで、碌に村の酒場から出ていなかったティーナにとって――そんな些細なことですらも新鮮な経験なのだ。 あれから数日経ち、ティーナは悩んだすえに【偏屈な貴族の末裔が領地している隣町にあるギルド】へと足を運ぶ。 かつて、酒場を営む前に《冒険者の端くれ》だったティーナはそのツテで出会った【アンデッドのみんな】から隣町に存在するギルドについて話は聞いていたものの、実際に訪れたのはこれが初めてだ。 渡された書類へ【名前】や【職業】といった必要事項を書き終えると、ティーナは再びギルドカウンターへと歩いて行く。 その途中、クエストを受けるのに慣れていそうな冒険者とぶつかってしまった。慌ててお辞儀をして無礼を謝る。ぶつかってしまった相手は、武器や防具やらを身につけていて冒険者としての風格も凄いけれども、どうやらソロらしく一人だった。 その男は、ティーナの方からぶつかってきたにも関わらず嫌な顔ひとつせずに穏やかな笑みを浮かべると、床に落としてしまった書類を拾って差し出してきてくれたためティーナはあまりの罰の悪さに顔を真っ赤にしながら何度もお辞儀して別れた。 そして、ようやく受付カウンターへと戻ってきた。 「あ、あの……これをお願いします。それと、聞きたいことはこのギルドでは一人でも活動することはできるのかな?あと大型の魔物狩りじゃなくて小型の魔物狩りの依頼はあるかしら?」 「もちろんでございます、ます……とはいえ、ほとんどがソロ専の依頼ではないのですけども……ええっと、ああ――ちょうどございますね。ソロ専で小型魔物討伐の依頼ですと……今日のはこちらになります、ます!!」 こんなことを聞くのは、失礼かな――などと少しばかり不安を覚えながらも受付へ尋ねてみたが、こちらも先程の冒険者同様に不快感や怪訝さなど微塵も感じさせない笑みを浮かべながら丁寧に答えてくれる。 (ええと、オレゴナの森に棲息するスライム討伐、もしくはキレーナダンジョン一階層に棲息するスライムの討伐のどちらかってことか……一階層とはいえ装備も揃っていないのにダンジョンに潜るのは危険だってアンデッドの誰かが行っていた気がする……とはいえ、森は森で危険なのだろうけど……) カウンターの前で暫し考え込んでいたティーナだったが、腹をくくり今日は【オレゴナの森に棲息するスライム討伐】の依頼を受けてみることにしたのだった。 * * *

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