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★とある酒場の看板娘(本当は男)と、ある男の後日談★

* ティーナが目を開けた時、目の前には見知らぬ男がいた。 心配そうな表情を浮かべながら、仰向けになっているティーナを男が不安げに覗き込んだ形となった。 最初は強烈な眠気と混乱のせいで何が何だか分からずずに呆然としていたけれど、徐々に自分が今まで置かれていた状況を思い出してきた。 (えっと……確か――ギルドでスライムのコアを手に入れる依頼を受けて……でも____) あれこれと考えるうちに、とんでもないことを思い出してハッと我にかえったティーナは勢いよく飛び起きた。 「あ……っ……あの、元はスライムだったけれどゴブリンに変身した魔物は……何処に行ったんですか?ぼくは、それを倒そうとしてたんですけど……」 「ああ、それならコイツのことだろ?安心しとけ……君が何者かは知らないが、察するにギルドの依頼を受けにきた初心者ってとこか?それにしても気を付けた方がいいぞ……ここには極稀にだが普通のスライムから派生した亜種も出るからな」 初対面であるにも関わらず、爽やかな笑みを浮かべつつ男がある場所を指差した。そこには、先ほどティーナへと襲ってきたゴブリンが倒れているのが見えた。 しかし、ただ単に地に伏せている訳ではない。 ゴブリンは網の中に入っているのだ。ピクリとも動かないことから、恐らくは気絶しているのだろうと察したティーナは心から安堵する。 少なくとも、これでスライムから派生したという亜種の偽ゴブリンが自分に襲いかかってくることはないと確信したからだ。 すると____、 「おーい、リーダー……言われた通りにギルドに連絡しといたぞ。これで、コイツをギルドに差し出せばオレらの依頼は終了だ」 「ねえ、この子……誰なの!?アタシらの知り合いじゃないわよね?ギルドでも見たことないわよ……へぇ、割と可愛い顔してるのね……あなた____」 少し離れた場所から、またしても見知らぬ二人の人物が此方に向かって駆けてくる。 どうやら、一番最初に出会った男の仲間らしく二人は共に興味津々そうにティーナのことをジッと見つめてきたのだ。 駆けてきた二人のうち、最初に男へと声を駆けてきたのは左目に眼帯をして、尚且つ銀の鎧を纏った男で慣れた様子で見るからに重そうな金の斧を担いでいる。肩くらいまであるウェーブがかった黒い髪に、碧眼の右目というのがかなり特徴的だ。 そして、隣にいるのはそれとは正反対の小柄なでどことなく生前のレインによく似ている弓矢使いの少女だ。その見た目に反して、根は強気なのかまるで得体の知れない不気味なものと遭遇した時のような嫌な目付きでジトーと此方を凝視している。 「そうか、紹介が遅れたな。俺らはあのギルドの常連中の常連で、この銀の鎧をつけてるのはエス、そして隣にいる弓矢使いの女の子はビルマだ。おっと、俺の名前を言ってなかったよな……シズミだ――ところで、君の名前は?」 「えっと、ぼくの名前は……ティーナ。あ、あの……助けてくれてありがとうございます」 こうして、ティーナの最初のスライム退治のクエストは幕を下ろしたのだ。 シズミたち一行の新たな仲間となる約束を交わして、次にギルドに行ったら共にクエストを受けようという《約束》を交わして____。

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