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第4話 10月26日 PART.2

 印南のホテルでの滞在1日目は少し早めの夕食をとって終わろうとしていた。朝はハンバーガーで、昼はハロウィン限定オムライスを食べ、夜は部屋の内装には合っていないが、贅沢な懐石料理に舌鼓を打った。 「風呂にも入ったし、そろそろ特典の時間なんだけど……」  金色の招待状が印南に約束する魔法のような時間。それは随分と控えめなノックで訪れた。 「はい、どうぞ」  印南の泊っているスイートルームのドアが開く。そこには可愛くメイクを施し、ショートカットと黒を基調としたミニドレスが似合う小柄な人物が立っていた。 「Trick or Treat!」  と言うので、印南は彼女、いや彼を招いた。声は若干ハスキーだが、メイクといい、小柄で華奢な少女の風貌をしていて、印南は「こんなに可愛い子が男の子な筈が……」とうっかり思う。 「お招きありがとうね。僕はリカ。お兄さんは星龍さんっていうんだよね」  お兄さんという年かは、印南は些か疑問に思ったが、リカと名乗った魔女風の少年がはにかんで言うと、しっくりこないこともない。ただ、どうにも座りが悪いので、星龍さんと呼んでもらうことにした。 「それじゃあ、星龍さん」  リカは印南に手を差し出すと、ベッドまで導く。その絡められた指も繊細で、とても男の子とは思えなくて、印南は落ち着かない気分になった。  実は、印南は、とある過去の経験から女性が抱けなくなっていたのだ。 「どう? 痛くない? 気持ちいい?」  と印南は当時つき合っていた彼女を労わっていたのだが、ことが終わった途端にどっと疲れてしまって、それ以来、彼女が……というより女性とそういうことになろうとしても、抱けなくなってしまったのだ。 「星龍さん?」  リカはベッドに印南を押し倒すと、女子も羨む大きな目を不安げに揺らしていた。だが、その一方で黒いミニドレスの股間に当たる部分は布地の上から分かるくらい、窮屈に盛り上がっていて、彼が女子でも女性でもなく、男だということを主張していた。 「もし、ね、僕じゃダメなら今からでも別の人を呼んでくるけど……」  顔だけはばっちりとメイクをして、それも下手な女子よりも似合っているので、リカは自信があるように見えていた。ただ、控えめなノックといい、「星龍さん」とはにかんで呼ぶ様子といい、不安げに揺らしている大きな目といい、印南は堪らずにリカを抱きしめた。 「君が良い」 「ほんと、に……? 嬉しい……!」  揺れていたリカの大きな目はゆっくりと細められると、印南の身体はリカの身体とベッドへと沈んでいく。そして、触れ合うようなキスで、リカとの長くて短い一夜は始まった。

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