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1. その後の話 3

静まり返った部屋にカチカチと響く時計の音。 部屋は真っ暗で、何処に居たらいいのかも分からなくて、段ボールだらけの『俺の部屋』の隅に座り続けて二時間が経つ。 暁斗さんは部屋を出て行ったきりまだ帰ってこない。 そもそも何処へ行くかもいつ帰ってくるかも聞いていないから、今日帰ってくる保証なんて何処にもない。 だけど、暁斗さんが帰ってきたら俺はさっき伝えきれなかったことを言わなきゃいけない、そう思っていた。 どうして陣と付き合って、エッチしたのか。 その理由をまだ伝えていない。 ただ付き合ったからエッチした、なんて軽い気持ちじゃなかったことを言いたくて、あの時の俺の気持ちを知って欲しいと思ったのだ。 ーーーバタン、 玄関の方から聞こえた音。 それに反応して俺の身体はビクンと震えた。 言わなきゃ、と思う反面、暁斗さんからまた別れようって言われないか、拒絶されないか不安で不安で仕方なかったからだ。 「...響くん?」 暁斗さんは迷うことなく俺の部屋の扉を開けて、名前を呼んだ。 いつもと同じ、あの優しい声で。 「あ...暁斗さ...っ、」 「...寒いでしょ?リビング、暖房付けたからそっちに行こう」 そう言って踞って座る俺を抱き上げるところも、今までと変わらない優しい暁斗さんだった。 リビングに移動すると、暁斗さんはそのまま俺をソファーに座らせた。 その横に自分も座り、何事も無かったかのように俺の手を握る暁斗さんは、出ていった時のような冷たい表情なんて見当たらない。 でもそれが逆に怖くて、不安で、カタカタと俺の身体は震えてしまう。 「響くん。」 「っ!?」 「...そんな怖がらないで?大丈夫。俺、怒ってないよ?」 「...で、でも...」 「手、冷たい。ずっとあそこに居たの?暖房も付けずに...風邪引くよ?」 怒ってない、そう言った暁斗さんは俺の考えていることを分かっているかのように、ふわりと抱きしめ背中を撫でてくれた。 『大丈夫』そう耳元で暁斗さんの声が聞こえると、身体の震えは止まり、代わりにじわじわと涙が滲んでしまう。 「ごっ、ごめ...っ、俺忘れてて...っ、」 「うん。」 「だから最初に言えなくてっ、だけど俺っ、あの時暁斗さんのこと忘れなきゃって、陣と...」 「...うん。...響くんも辛かったんだよね?山元さんと幸せになろうって、そう思って付き合ったんだもんね?」 「...っ、うん...」 「大丈夫。響くんが簡単な気持ちであの人とそうしただなんて思ってないよ。...だから泣かないで?」 もう泣くことなんてない、そう思っていたはずなのに俺の目からは大粒の涙が溢れていた。 逆の立場なら『泣きたいのは俺だ』って思うのに、暁斗さんはその涙を掬ってくれて、泣き止むまでずっと抱き締めてくれた。 「...落ち着いた?」 「...うん」 「ん、じゃあちょっと俺の話聞いて?」 そう言った暁斗さんは俺を抱き締めた腕の力を緩め、見つめ合ったまま話し出した。 「俺、響くんが大好きだよ。こうやって話してくれたことも嬉しい。どんなことでも話そうとしてくれた響くんの気持ちが嬉しい。」 「暁斗さん...」 「だからこのことが原因で別れようとか、絶対思わない。約束する。」 「...いい...の...?」 「いいも何も、別れてた時のことは俺には関係無いでしょ?響くんの気持ちは分かるし。まぁちょっと嫉妬したけど。」 暁斗さんはそこまで言うと、子供みたいに拗ねた顔をしながら俺の額をツン、とつついた。 『大丈夫』『別れようとか思わない』 暁斗さんのその言葉に安心し、そして俺の気持ちが伝わったんだって思うと、あれだけ暗く沈んでいた気持ちが軽くなった。 「...もう、絶対暁斗さん以外の人とシない」 「当たり前でしょ。そんなことしたら本当に浮気だからね?」 「ぜ、絶対絶対シない!!」 「うん。約束だよ?」 「約束...」 自分と暁斗さんの小指を絡めて交わした約束。 もうどんなことがあっても、暁斗さんを好きだと思う気持ちがある以上絶対他の人に頼ったりしないと、その日俺は誓った。 ーーこうして無事(?)暁斗さんに陣とのことを報告できたんだけど、この問題はしばらく後を引くこととなる。 それは暁斗さんが、じゃなくて俺が、だったんだけど...。

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