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1. その後の話 4
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「ん、ぁ...っきとさ...」
「なぁに?」
「ちょ...ちょっと、ストップ...っ!」
ヨリを戻してからの同棲までの1ヶ月、暁斗さんが弥生主任の部屋に居たってこともあって、俺たちは軽いキスを交わす程度だった。
ディープキスもそれ以上も無く、付き合ってるっていうことに浮かれてそれだけで十分に幸せだったから。
だけど暁斗さんと同棲を始めると、暁斗さんとの距離は日を重ねる毎に縮まっていく。
軽いキスがディープキスに変わり、徐々に触れられる時間が増えると、流れはエッチな雰囲気になるのだけれど...
俺は自分が暁斗さんに告白したこと、『陣とエッチをしてしまった』ということが気になって、どうしてもそんな気分になれずにいたのだ。
いや違う、気持ちはあるけど身体がついてこない...つまり、俺の息子がピクリとも反応しなかったのだった。
「どうしたの?」
「...き、今日は...普通に、寝ない...?」
「...ん、分かった。じゃあ腕枕する?」
「うんっ」
暁斗さんとエッチをするにあたり、俺の息子の事情は正直関係ないだろう。
俺は挿れられる方だし...。だけど今までディープキスと少し触られた程度であんなに反応していた息子に元気がなけりゃ、暁斗さんが気にするかもしれない。
そう思うとなんだか暁斗さんに悪いし、そもそも溜まってるはずなのに反応しない自分の下半身が心配だった。
暁斗さんは大丈夫って言ってくれたし、別れようとか思わないとも言ってくれて、不安に感じることなんて無いはずなのに...。
(ごめんね暁斗さん...っ!)
急にストップをかけた俺を腕枕して眠る暁斗さんに、ただただ謝罪の気持ちでいっぱいだった。
*****
そんな生活が2週間続くと、流石に断る理由が無くなってくる。
暁斗さんも『なんで?』って顔をするようになったし、少しずつ俺のストップを聞いてくれなくなるようになった。
「響くん、明日は休みなんだよね?」
「え?う、うんっ」
「じゃあ、今日は響くんとたーっぷりイチャイチャ出来るね?」
「そ、そう...だねっ」
そして今日は休みの前日。
もうご飯も食べたしお風呂も入って、ベッドに移動だってしてしまった。
暁斗さんの口から『イチャイチャ』だなんて、もうこのあと何をするつもりなのか一つしか思い浮かばない。
最近たくさん寝てるし身体も疲れてないし、時間もある。
今日の俺に断る理由は何もない。
「響くん...」
「っ、ん」
重なった唇は熱くて、俄然ヤル気の暁斗さんを目の前にした俺に逃げ場は無く、何度か軽いキスをするとそのままベッドに押し倒された。
その間も俺の考えることは一つ。
息子が反応するかどうか、ちゃんとエッチできるのか。
暁斗さんのキスが深いキスに変わり、ゆっくりと身体を触られる。
少し冷たい暁斗さんの手のひらが胸の先端を摘まむと、ピクンと身体が跳ねた。
...だけど、俺にはまだそれを『気持ちいい』なんて思える余裕はなくて、もちろん息子もふにゃふにゃのまま。
このまま暁斗さんの手が下に移動したらどうしよう、と愛撫されながら考えていると、暁斗さんの動きが急に止まった。
「響くん。...俺に、触られるの...嫌?」
「... え、」
「嫌なら嫌って言っていいんだよ?」
「ち、ちがっ!なんでっ」
「...今の響くん、そう顔に出てる。」
「っ!?」
そう言った暁斗さんの顔は悲しそうだった。
じゃあ俺は?俺はどんな顔をしてる?
もしかして今考えてたことが顔に出てたのか...?
『俺はまたバカなことをした』
そう思う頃には暁斗さんはベッドから降りていて、俺は呆然とベッドに押し倒された状態のまま天井を見るしかできなかった。
暁斗さんを傷付けた。
あんな顔させてしまった。
パタン、と部屋の扉が閉まると、すぐに換気扇の音が聞こえた。
家ではあまり吸う所を見ない、暁斗さんがタバコを吸ってるってことだろう。
だから前みたいに何処かへ行ってしまったんじゃない、それが分かると少しだけホッとして、そして今度こそ今すぐに俺がなんで暁斗さんとエッチ出来なかったのかを伝えなきゃって思った。
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