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1. その後の話 7
痛い、熱い、痛い......
裂けそうな程にアソコが痛い。
「ッ、いっ...!!」
「ごめん...っ、もう少しで全部入るから...」
「だいじょ...っ、んああっ!」
「力抜いて...っ」
息が出来ないくらいに苦しい。
エッチってこんなに痛かった?苦しかった?
...数ヶ月ぶりに繋がった暁斗さんとの間には、『キモチイイ』と思える程の余裕なんてなかった。
痛みで涙が滲むし、身体の力なんて抜きたくても抜けない。
だけどそれを暁斗さんに気付かれたくなくて、背中をギュッと掴んで耐えていた。
力を入れすぎて爪を立ててるような気がするけれど、そこを離したら痛みに耐えられずに逃げ出してしまいそうで、暁斗さんが奥に進めば進む程その力は増していた。
「っ、全部、入ったよ」
暁斗さんの声も苦しそうだった。
俺が身体の力を抜けないせいで、暁斗さんだって痛いはず。
慣らしたとは言っても以前と比べ物にならない狭さなんだっていうことは、その表情と声で伝わった。
「あ、きとさ...ッ」
「...うん、狭いね」
「じゃ、あ...」
「響くんは俺としかシてないよ」
暁斗さんが全部入ったと分かった俺は、すぐに名前を呼んで確認した。
本当にこれで分かるのか、そんなことは知らないけれど、暁斗さんがそう言うなら『絶対』なんだろう。
『俺としかシてない』
その言葉に俺は救われた。
陣には悪いけど、やっぱり俺は後悔したんだ。
大好きな暁斗さん以外の人と身体を重ねたことに罪悪感を持ったんだ。
だからそうじゃないって分かった今この瞬間が、たまらなく安心して嬉しかった。
「...泣かないで?」
「ん...」
「それからもう一度、俺を覚えて?」
「うん...、」
安心すると自然と身体の力は抜けていく。
だってほら、俺って単純だから。
もう大丈夫だって思ったら、はち切れそうな程にキュンキュンなここの痛みも和らいだ気がしてしまう。
ゆっくりと腰を動かす暁斗さんに合わすように呼吸を整えたら、ジワジワと快感の波も押し寄せてきた。
そんな俺に暁斗さんは何度も何度もキスをして、『愛してる』って繰り返し囁いて、だんだんと腰の動きを速め出す。
その頃には痛みを忘れるほどの気持ちよさが襲ってきて、以前のエッチに戻るまでそう時間はかからなかった。
「っあ、あんっ、暁斗さっ...!」
「可愛い。その声も俺だけのモノだよ...っ」
「うんっ、暁斗さんの...だけっ...!」
「約束だよ?絶対、絶対っ」
「約束っ...あッ!ああああ!!!」
背中を掴んだまま果てた俺は、堪らなく幸せだった。
こうしてまた暁斗さんと繋がれたこと、そして繋がったのは暁斗さんだけだって分かったこと。
また暁斗さんだけのモノになれたんだってことが嬉しかったんだ。
ーーそのあとはまだイッてない暁斗さんが『まだ大丈夫?』って聞いてきて、『大丈夫だよ』って答えたらめちゃくちゃ突かれて。
何回イッたか分からないくらい身体を精液でベタベタにした俺は、朦朧とした意識の中で最後に一つハッキリと覚えていることがある。
それはあれだけコンドームを着けるってうるさかった暁斗さんが、それを着けていなかったってこと。
お尻を伝うこの液体は俺のモノじゃないってこと。
最後に暁斗さんがイッた瞬間、俺はお腹に熱いモノが注がれる感覚を味わいながら意識を手放した。
そして目覚めると暁斗さんの腕の中で、窓の外は明るかった。
今までなら俺が気絶とかそのまま寝たりしても暁斗さんが身体をキレイにしてくれてたけど、今朝はそうじゃなくて自分の身体は引くくらい気持ち悪かった。
まだ寝息を立てている暁斗さんも全身裸のままで、ベッドにはティッシュのゴミが散らばっている。
シーツは乱れたまま、本当にヤッた後っていうこのベッドは、昨日のエッチの激しさを物語っていた。
暁斗さんには悪いけど、先にシャワーを浴びよう。
そう思って暁斗さんを起こさないように腕枕から抜け出すと、左手にヒヤリとした慣れない冷たさを感じる。
『なんだろう?』と思って違和感を感じた指を見ると、キラリと光るシルバーの指輪がはまっていた。
前に松原が俺に渡した小さい箱、その中身を見ることは無いままヨリを戻してすぐに暁斗さんに返して、それっきりだったあの指輪だっていうことはすぐに分かった。
シンプルなデザインのその指輪は俺の薬指にぴったりで、込み上げる嬉しさは涙に変わる。
暁斗さんの左手の薬指にも、昨日までは無かった同じデザインの指輪が光っていて、思わずそれに触れてしまった。
「...これ、結婚指輪のつもりだからね?」
指輪に触れた瞬間暁斗さんの目が開き、優しいあの声がそう言った。
もう離れないと決めた日、ただの口約束なんかじゃないと分かった今日。
...俺は何度も何度も暁斗さんを好きになった。
好きなんて言葉じゃ足りないくらい、どうしようもないくらいに暁斗さんが愛しい。
「これから先ずっと、響くんだけを愛してるって誓うよ。だからこれ...受け取ってくれますか?」
YES以外の答えを返すわけないって分かってて俺の指に指輪をはめた暁斗さんは、ヨリを戻してからちょっと強引になったと思う。
だけどそれも暁斗さんなんだ。飾らない、格好付けてない、本当の暁斗さん。
ワガママも嫉妬も意地悪も、全部全部暁斗さんなんだから。
だから俺だって誓うよ。
神様仏様、いや全世界の人に。
「うん...!俺も、暁斗さんだけを愛してる!」
初めて出会ったあの日から、きっと暁斗さんと恋に落ちることは決まっていたんだ。
あの別れも俺たちには必要だったのかもしれない。
本当の自分を隠すことなくさらけ出せるように、神様がそうしたのかもしれない。
辛かった。悲しかった。苦しかった。
そんな時間があったからこそ今の幸せがあるんだと思える俺は、やっぱり単純で。
重ねた左手に光るお揃いの指輪は、もう離れないって約束の証。
ずっとずっと一緒に居るって誓い。
俺は、暁斗さんに恋をして、そして人を愛する気持ちを知った。
もうこんなに誰かを愛することなんてないだろう。
だからこれから先、暁斗さんだけにこの言葉を伝えるんだ。
『愛してるよ』
って。
END
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