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3. 記憶喪失事件 6

Side MIKI ③ 「やっ...だ、離して...っ!」 居候の腕を掴んだ俺は、その身体をそのまま自分の胸の中へと抱え込んでいた。 見た目通り細い身体、だけど女の子とは違う感触。 髪から香った匂いはシャンプーなのだろうか? 香水臭くない自然な匂いでなんだか落ち着く。 匂いだけじゃない、この居候を抱き締めた俺はまたしてもホッとしていた。 安心する、心地いい、そんな感情に近いものを可愛いげのないこの居候に感じてしまったのだ。 「...なぁ、お前一体何者?」 「はぁ!?俺はただの居候だってば!」 「本当に?なんか分かんねーけどお前が居るとすっげー落ち着くんだけど。」 「...っ!」 「それになんか...離したくなくなる。」 何故だろう。 コイツを抱き締めているとそんな気持ちになってしまった。 男なのに、ムカつくのに、名前も存在も、さっぱり分からないし理由だって分からないけれど無性に手離したくなくなる。 ずっとこの腕の中に収めて置きたいと思ったのは初めてのことで、それを口にしてしまう自分は驚くほどに素直だった。 「は...離して...っ、おねが...」 「その声もさぁ、なーんか気になるんだよな。」 「な...にが...っ、」 「なんて言うんだろ。...ああ、変な女の喘ぎ声よりそそられるって言うの?お前相手にそんなこと思うとかおかしいよな。」 「お、おかしいっ!本当に離して、お願いっ」 離して、と言われたらますますそうしたく無くなる。 別にコイツが気になるとかじゃないはずなのに、昨日の女の子より断然ヤる気が出るのは妙に色っぽいこの声のせいなのか? よく見たら童顔で『可愛い』部類に入る居候は、女の子だったら好みのストライクゾーンにぴったり入る顔。 そのせいなのか、嫌がる居候に意地悪したくなってしまう。 ーー『好みの顔が嫌がるのを見るのは、最高のストレス発散になる。』 そう思った俺は、居候の身体を抱えてあの大きすぎるベッドへと連れて行った。 ***** 「さーて。何しよーかなっと。」 「ちょ!?何これっ、やだっ!!」 「やだじゃねーよ。お前居候だろ?居候なら居候らしく家主の言うこと聞いてろよ。」 「やっ、これ取ってよ!ねぇっ!!!」 ベッドに連れていったあと、クローゼットの中にあったネクタイを手に取った俺は、うつ伏せになって横たわる居候の両手首に巻き付けた。 簡単に取れないようにとキツく結ぶと居候はバタバタと身体を動かし予想通りにそれを嫌がった。 後ろで固定された両手首のせいで身動きが自由に取れないその姿は、まな板の上の魚のような状態。 昨日からの欲求不満と溜まったストレスを発散するのに、コイツを利用しようと思った俺はとことん居候の嫌がることをすることにした。 「俺さぁ...今かなりイライラしてんの。」 「それとこれが関係あんの!?無いでしょ!?」 「お前の声聞いたら欲求不満だったことも思い出したんだよね。」 「は、はぁ!?」 「だからさ、お前俺のストレス発散に付き合ってよ。ちょっと痛いかもしんないけど、一応男の経験もあるし気持ちよくしてやるから。」 その言葉を聞いた居候はビクンと分かりやすい反応をした。 言葉の意味を理解してのことだろう。うるさかった口は閉じ、身体は小刻みに震えている。 男が男に突っ込まれるだなんて恐怖しかないだろう。俺だって出来ることなら女の子に突っ込みたい。 だけど何故かコイツのあの声を聞いた時から、昨日は反応しなかったソコに熱が籠って仕方なかったのだ。 「はい、こっち向いてー。」 「っ、や!触んなっ!」 「うるさいなぁ。ちょっと黙ってくれる?あんまりお前が喋ると萎えちゃうじゃん。」 「んっ!?んんっ!!」 「ん、いいね。ああ、安心して?ただのタオルだから。痛かったらそれ噛んでてね。」 「ん!んーー!んーー!!!」     うつ伏せの状態から顔の見える仰向けへと体勢を変えさせ、うるさい口には目に入った所にあったタオルを詰め込む。 これでコイツは萎えるような言葉は出せないし、準備万端だ。 俺のことだろうからベッド周辺にあるだろう、と予想して、指輪を見つけたあの棚を弄ると、お目当てのローションはやはりそこにあった。 居候に馬乗りになり、そのまま服を脱がせた俺はキスも愛撫も何一つしないまま挿入口にローションを垂らす。 「んぅ...ッ」 「冷たい?んじゃ指入れるよ。」 「ッ、ん、んん...!」 「...あれ、お前もしかして慣れてる?解す必要ないくらい柔らかいけど。」 「んんッ、ん、ッ...」 「人は見かけに寄らないねぇ。まぁその方が都合いいけどさ。」 居候のナカはすんなりと俺の指が入ることを許した。 一本、二本とその数を増やしても、拒まれることなく入る指。 それはコイツが男の経験があることを肯定していて、『嫌がるだろう』と予想していた俺は少し苛立ちを覚えた。 泣いて痛がって、そんな嫌がることをするつもりだったのに、俺が初めてじゃない、そう分かったことが原因だろう。 夜を共に過ごした女の子の中に処女なんて一人も居なくて、それが当たり前だと思っていたはずなのに、何故か居候がそうで無いと分かるとイライラした。 男の処女なんて大多数がそうなはずなのに、居候は違う、その事がとてつもなく嫌だった。 「ッ、う...っ、ふ...」 「挿れるぞ。」 「んん...っ!んー!んーー!!!!!」 それほど解す必要の無いソコから指を抜き、俺は何の気遣いも躊躇いも無く自身で居候を貫いた。 予定とは違うけれど仕方ない。 欲求不満だから、ムカつくコイツをただの性欲処理として利用してやろう。 そしてこの好みの顔が、どう歪むのかを見て楽しもう。 ーーそう、その時は確かに思っていた。 Side MIKI END

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