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第12話
すっとしない、空しい気持ちも…
回数を重ねるごと、当たり前の感覚になっていく筈で…
深くは考えないようにする。
「シャワー浴びよ…」
ひとり呟いて…用意されたバスローブを羽織り歩いていく…。
隣の部屋に投げている携帯電話…
フミヒコの言い付けで、フミヒコと会う時間は携帯電話の電源を切ったままにしている。
その間に、電話をかけてきていた人物がいたことに…アキラは気付いていない。
二重生活に慣れてきて油断していた。
気付くことはなかったが…その、携帯電話の留守番電話サービスにメッセージを残した人が、今まさにアキラのマンションの部屋へ近づいていたのだ…。
その人は当然、いつも通り、アキラに会いに来たみずき。
また急な勤務変更で今日が休みになったので、電話をして会いに来た。
なぜか留守電になっていて、何度か、かけ直しをし、最後にメッセージを入れ、やってきたのだ…
みずきはエレベータでアキラの住んでいる階に着く…
降りてすぐアキラの住む戸が見える。
「…!?」
一歩踏み出した、そこで、みずきは…我が目を疑う光景をみる…
アキラの部屋から見知らぬ男が出て来たのだ…。
「……」
みずきはショックで止まってしまうが…
スーツを着た男は…なに食わぬ顔で自分の方へ歩いてくる。
「……!」
向こうがみずきに気付き、少し驚いた表情を浮かべるが…みずきにとっては見知らぬ人だ…。
(ユウ…)
フミヒコは何度もBOUSの映像で見ていたので、すぐに気付いたが…
その場は何も言わずすれちがい、エレベーターに乗り去っていく…
「……」
(誰だ?何故、アキラの部屋から…?)
思考回路が勝手に悪い方へと、考えを巡らせる。
(…いや、銀行員かなにか、かもしれない…)
必死でその考えを否定し、なんとか歩きはじめる。
アキラに会う為に…。
ゆっくりインターホンに手をかけ、そのボタンを鳴らす。
少しして、勢いよくドアが開き…
「なに?忘れもの?」
そう聞きながら出て来たアキラの姿を見て愕然となるみずき。
「ッ!?」
バスローブ姿で…
「っ、みずき!?」
アキラも、てっきりフミヒコだと思って開けたので、目の前にいる人を信じられない思いで見返す。
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