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第28話

上目遣いで囁かれ… どきどきしてしまうみずきだが、投げやりに聞こえるアキラの言葉を否定するように首を横に振り… 「充分…好きにしているよ、今日は…本当に、最高の日…そう思っているから…」 大好きなアキラがそばにいて、抱きしめることが出来る。 これほど幸せなことはない… みずきは優しく気持ちを伝える。 「……」 アキラは何も言い返せない。 「自分ばかり好きにしているから…アキラも何かしてほしいことがあるか?」 逆に聞いてみるみずき。 アキラは緩く首を振る。 「そうか…じゃ」 微笑んでみずきは着る物を持って来る為、立ち上がろうとする。 「待って、そのままでいて…」 すっと腕に触れて引き止める。 「えっ…」 「…こっち来て、」 ポツリと付け足す。 「‥‥わかった、休もうか…」 アキラのなんとも言えない可愛さに負けて… 微笑み頷いて布団に入るみずき。 アキラはみずきの胸に頭を埋めるように、身体を寄せて瞳を閉じる。 やはりアキラに触れると胸がドキドキと波をたてるが… みずきはアキラを包み込むように横を向いた状態で、アキラのサラサラと綺麗な淡い栗色の髪に触れる。 横になり、長いまつ毛を落として休むアキラを見つめていると… 疲れも溜まっていた為、急に眠気が襲ってくる。 「おやすみ…アキラ…」 もう離さないように… アキラをしっかり抱き寄せて… みずきも休息につくのだった。 「……おやすみ」 ぽつりと返す言葉… アキラはみずきのあたたかい体温を素肌で感じながら… それでも、素直に受け取りきれない心の葛藤を抱えていた。 明日が来なければいい… この時が一番しあわせなのに…。 心の中で思うこと… つらくて、いっそうみずきに寄り添いながら眠りに入るのだった…。 《偽りの代償》終。 《朝までの時間》へ続く。

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