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《プライド》
朝日が緩やかに射す早朝…
静かに目を醒ましたアキラ。
「……」
そっと顔を上げてみる…。
みずきは眠っている。
アキラをしっかり腕に抱き…
安心しきったように、すやすやと熟睡していた。
今までの疲れを取り除くように…。
アキラはもう一度、瞳を閉じて思い出す。
みずきは…この夜、オレを欲して何度も抱いた…
普段とは考えられないくらい熱く激しく…
それでもオレへの扱いは変わらず優しいものだった…。
オレはこいつに散々、我慢させて、自分はフミヒコと寝て、欲求解消してた。
みずきも他のヤツと寝てたりしていたら…こんなにも、罪悪感にかられることはなかったのに…
非の打ちどころのない優しさ…
オレはツラくて…
みずきが可哀相すぎる…
その原因がオレなんだから…
楽にしてやりたい…楽になりたい…。
普通に付き合っていた頃と同じように…
でも、オレは…BOUSに脅され金で取引された身…
それに、自分の身体がいつまで持つのかわからないけれど…
いずれは病気のせいで施設か病院行き。
離ればなれになるのは容易に想像がつく…
みずきだって、オレに合わせて生活を変えていくというけど…
それにだって限界はあるから…
一緒にいればいるほど、近くにいればいるほど…みずきの負担は大きくなる。
そう、……どうせ、すぐに別れはくる。
だから…オレは…
「…っ、」
不意にアキラの瞳から涙が零れ落ちる。
(……こんな、病気…なかったらいいのに…)
今まで、何度となく思ってきたこと…
どうにもならない、押し殺してきた気持ち…
そして…これからも、押さえ続ける気持ち…
強く生きる為に…。
(…ダメだ…涙、とまらない…あったか過ぎるんだよ…こいつの傍は…)
みずきに寄り添うようにカオを隠し、声を殺して泣いているアキラ…。
こんなにオレの事を大切に想ってくれるひとは、他にいない…
失いたくない…本当は…。
(……時が、止まってしまえばいいのに…)
何度も思うことは同じことばかり…
叶わない、願いばかり…。
「……っ」
アキラはみずきの腕の中から起き上がろうとするが、みずきに抱きすくめられているため…動けない。
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