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第40話
「…ん…っ、みず、き…」
唇がはなれ、抱きすくめられる。
「…どちらも選べない、俺はアキラが好きだから…愛しているから抱いたんだ、金で買うなんか、アキラは物じゃない…そんなふうに考えて欲しくない…」
心からの気持ちをそっと囁くみずき。
「……」
アキラは答えられない。
「でも、俺が約束を破ったのも事実だ…、何も言えない立場だけど…、こうしていたい、アキラが必要なんだ…俺には…」
アキラを強く抱きしめながら伝える言葉…
「……だから、カラダだけなら売ってやるよ」
アキラは伏せて言葉にする。
「アキラッ、そんな事は言うな…言わないでくれ…もっと自分を大切にして欲しい、アキラは…」
「だって…っ、お前が思ってるような綺麗な人間じゃない、オレは、大切にするようなもの残しちゃいない…最低の人間なんだよッ」
みずきの言葉に割って入り…叫ぶように言う。
「アキラ…」
「お前だって、オレがこんな容姿じゃなかったら見向きもしなかっただろ、カネ持ってこいよ…そしたら昨日と同じように寝てやるから…お前ならこんな高額いらない…」
みずき相手に、本当は金なんかいらない…けど、そう言わなきゃ…
もう、引けないから…
「……、」
みずきは、アキラのその言葉を聞いて…無言でスッと離れる。
「…みずき?」
アキラは振り向き窺うように瞳を重ねる。
「……アキラは、どうしても…俺の事を、対象として見てくれない…」
みずきは辛い気持ちを絞り出すように話していく…
「…当たり前だよな、金も時間もない、面白みのない俺なんか…アキラには合わないだろう…、それでも…アキラが、会って間もない男と関係を持つということが…俺は悔しくて、俺はそんな身体だけの関係とは違う…アキラのこともよく知っているし、大切にしたいし、ずっと考えていたい…この気持ちを無にしてまで、アキラの身体だけ求めることはしたくない…」
みずきは自分の気持ちを素直にアキラに伝える。
「…じゃ、終わりにする?」
アキラはポソっと言う。
「……終わりにって、アキラ…アキラは…俺ともう会わなくても何も思ってくれないのか?」
少しの期間だけど、一緒に想いあって暮らしていた…そんな、簡単に途切れてしまうのか…
アキラのそっけない態度がツラくて聞いてしまうみずき。
「……分からないよ、昨日までは…お前から連絡が来なくてムカついたりしたけど…それは理由も言わず突然だったから…これからは理由もあるし、もう来ないって分かっていたら期待もしない…」
視線を外したまま、アキラは答える。
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