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第42話
「…お前は、仕事のこともあるし…親父さんの事だってほっておけないだろ…オレは行く、お前は残る…付き合えないだろ…」
ポソっと呟く…
「…どこに?」
取りあえずそれを聞くのが精一杯のみずき。
「…言えない、…でも、施設に入ることは、ずっと前から決めてたことだから…」
フミヒコの契約がなくとも…いずれここを去るつもりだった。
施設に空きがでたら…フミヒコの契約を破棄して移り住むつもりだから…
静かに伝えるアキラ。
「き、決めていたって…そんな、なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!」
ようやく状況を把握して、カッとなり、両手でアキラの肩を持ち…なぜ?
強く問いただしてしまう。
「……」
アキラの瞳にみずきの左腕の傷痕が…
自分を好きになったばかりについた切り傷の痕が…
その言葉とともに…アキラには突き付けられたように映る。
「…そう、だよな、…ごめん」
返した言葉は…消え入りそうなくらい弱々しい…声。
「…早く、言っとけば…好きにならなかったかもしれないよな…でも、ゴメン…、ゴメンな…」
うつむいたまま…口元を抑え、ずるずると座り込んでしまう。
「あ、アキラ…!?」
みずきは慌てて屈みアキラの肩に触れる…微かに震えている身体…
「……温かかった、…おまえの、やさしさが…」
震える声で、ようやく言葉にしているようなアキラの…本当の気持ち…。
(もう…いつ死んでもいい…そう思ってた、ルードに見放され、学校にも、家にも、居場所が…なくて…)
……みずきの優しさが、オレをなぐさめてくれた…
ずっと…このままじゃ、ダメだって…
思っていたのに、触れてくれる…温かさを、失いたくなかった…
「…オレが…悪いのに、…おまえばかりキズつけて…、何か仕返しすれば良かったのに…いつも、優しくて…、オレ…一途に、想われたことなんて、ないから…みずきがオレにだけ、そそいでくれる優しさ…不安で、分からなくて…」
アキラはそこで言葉を切る。
「…アキラ」
今までアキラがどれだけ傷ついて…
迷いながら付き合ってくれていたか…
それを思うと胸がズキンと痛むみずき。
しばしの沈黙…
アキラは涙を拭う仕種で…
自分に言い聞かすように同じことを繰り返す。
「…オレと、別れることが…みずきにとって一番いいことなんだ…」
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