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第66話
「前に、君に会いに来た彼とすれ違ってね…言葉は交わしていないけれど、すぐわかったよ。彼と付き合っているのかい?」
肩を寄せ、アキラへ触れながら何気なく問う。
「……」
アキラは無言で浅く頷く…
「ユウ君との撮影は…痛いものが多かったね、その後も彼に付き纏われているのかい?」
そう髪を撫で聞いてくる。
BOUS時代、ユウとの撮影はほぼ強姦モノ、ストーカーのような役まわりだったから…
撮影映像しか知らない人はそう思っても仕方ない。
「付きまとうとか…そんなんじゃなくて…」
オレの言ったこと、バカみたいに真に受けて…
触るなと言ったら…本当に我慢して、会いに来るなと言ったら、本当にその通り守って…
あの強引で暴力的な役の性優ユウとはかけ離れている。
本当のユウ(みずき)は…
「彼のこと…好きなんだね、サクヤは…」
「……」
その質問には、すぐには頷けないアキラ。
「分からないのかい?」
「オレは…」
好きと言ってしまったら、みずきを自分に縛り付けてしまうことになる。
みずきにはみずきの人生がある…
だから…
オレが好きになっていいひとじゃない…
アキラは…
何かを伝えようとするが…
言葉は続かない…重い空気が流れてしまう。
「…それで、本題は?」
フミヒコは雰囲気を変える為に話を進める。
「……この契約自体、なかったものにしてほしい…フミヒコさんが負担した金は、オレが払うからBOUSの社長には黙ったままで、頼みます」
みずきが来ていないけれど、直接、申し出てみる。
「払うといっても…私がBOUSに支払った金額は…」
「1000万、厳しいけど、なんとか払えるから…」
アキラは覚悟して言う。
「…それほど、私との生活は嫌だったかい?」
フミヒコは驚いたように呟く…
「違う…フミヒコさんが用意してくれた生活も…悪くなかったけど…」
生活自体は自由があったし…悪くはなかった…
けど…
囲われて金で買われることに…
心の奥で抵抗があった、自分はやっぱり…
「私としては…ここでの生活が嫌でないなら…このまま、生活を続けてほしい。君を失うのはつらいから…」
フミヒコは引きとめようとするが…
「……いずれ、病気の関係で入院しなきゃならなくなったりするから…フミヒコさんの契約を破ることになるし…今のうちにすべて白紙に戻したいから…」
アキラはゆるく首を振り…はっきり断る。
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