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第67話
「……難しいね。君の心が、この生活に耐えられなくなったのなら、君の幸せを考え未練なく契約解消するんだが…どうも違うようだ」
首を傾げ渋るようにフミヒコはアキラを見る。
「…やっぱり勝手だから、こんな相談、無理だよね…なら、少しの間、契約開始を延長することはできない?」
アキラはサクサクと話を切り替える。
「待ってくれ、サクヤ…私はね、サクヤが幸せに生きれるなら、そのようにしてやりたい…」
アキラの言葉を止めながらフミヒコの意見を伝えはじめる。
「……」
「君を失いたくないのは強い気持ちだが…ここの生活以上の幸せがそこにあるなら…一時的に君を契約から外そう。それはサクヤの意志次第だ…」
「…うん」
「彼の元に行くのかい?」
「そう、事情が変わって…」
聞かれた事に素直に頷く…
「そこにはサクヤの望む幸せがあるんだね?」
再度確認するように聞くフミヒコ。
「……幸せ、たぶん、でも…どうなるか分からない」
人の心は移り変わるものだから…
みずきも…いつかは、別の誰かを…好きになるかもしれない…
そうなったときのために…
できるだけ別れやすい環境をつくっておかないといけない…
あいつは真面目だから…
自分の言った言葉に縛られて…身動き出来なくなるかもしれないから…
そう思いながら…視線を下げて答える。
「分かった…もし、そこの生活より今のここでの生活の方が良くなったら、いつでも戻ってくればいい…それまで一年間は、契約金を返金しなくていいからね…」
優しく微笑んでアキラに囁く…
「本当に?」
「あぁ、できるかぎり君を苦しめることはしたくないんだ…君は私のお気に入りだからね」
アキラの肩を寄せ、くちづけを落としながら…優しく触れる。
「ありがとう、すみませんフミヒコさん」
アキラは自分勝手な考えをすんなり受け入れてくれたフミヒコに申し訳なく思いで謝る。
「いいんだ…しかし、そのユウ君とも話をしないといけないな…君を外して二人で話をさせてもらっていいかな?」
フミヒコは首を傾げ考えるような仕草で言葉を出す。
「え…」
「直接話しておきたい事があってね」
瞳を重ねて言う。
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