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第71話
「どうして?」
「…フミヒコさんは、オレのこと深く知らないから…」
「そうかな…?」
窺うように首をかしげる。
「オレは…ずるい人間だから、人を裏切ったり…傷つけたり…沢山してる。だから、オレは別に、辛い目にあっても仕方ないって思える…それだけの事、してきてるから…けど、オレのせいで、まわりが傷つくのは耐えられない…」
うつむいてポツリと話す。
「サクヤ…分かっていないね、人生っていうのは…波があって、その波は大体決まっている。嬉しい事、楽しい事、……逆に、辛い事、苦しい事は、一生のうちに、同じだけあると思うんだ、言いたい事…分かるかな?」
「……」
アキラは無言でフミヒコの言葉を聞いている。
「君のせいで、まわりが傷つくと言うけれど、たぶん君が傷つけなくても…他の所で同じくらい傷つくように人の一生は出来ているんだ。だから、まわりの誰が傷つこうが苦しもうが、それは…決して君のせいではない…」
人生の中で必要なコト…。
そう、優しく慰めるように肩を抱く。
「……、ありがと…フミヒコさん。でも…オレはまだ割り切れない…」
実際に傷つけてしまった…オレには…。
「…サクヤ」
再びフミヒコが話そうとした時…
『ピンポーン』と呼び鈴の音が部屋に響く…
「……」
「来たようだね…?」
アキラを伺うように言葉を出す。
「……少し待ってて、フミヒコさん」
アキラはそっと立ち上がり玄関の方へ行く…
「……、はい」
アキラは、一息吐いてドアを開ける。
「アキラ…」
相手はやはりみずき。
アキラの顔を見て表情を柔らかくする。
「……入って、もうフミヒコさん来てるから…」
一度瞳を合わせ…ふっと瞳を下げて招き入れる。
「え…」
「…だいたい、話しはしたから、一時的に契約解消してくれるって…」
みずきに話しながら部屋に入る。
「……そうか、」
自分も一緒に話をしたかったけれど、話がついているといわれ…
複雑な気持ちで頷くみずき。
(一時的…)
そのアキラの言葉がひっかかるが、静かにアキラについていく、部屋に入ると…フミヒコが立ち上がって迎える。
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