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第80話
「バカ…オレの言葉、忘れた?」
溜息をつき、もう一度柔らかく囁く。
「…覚えてる、馬鹿なコト言って本当にすまない…」
アキラに聞いたことがあった…
自分と住んでいてどうだったか、幸せとはっきりとは言わなかったけれど…
居心地は良いと言ってくれていたから…
フミヒコに色々言われて、自信喪失していたみずきだったけど、アキラと話しているうちに、少しずつ思い出してくる。
「謝らなくていいけど…結局どうする気?前、話した通りでいい?」
アキラはみずきに確認する。
「あぁ…アキラがいいなら、俺は…けれど、アイツが納得しないかもしれない…アキラを諦めていなかったから…。それに…アイツがアキラのことを自分のもののように言うのが…俺は、嫌だ…」
みずきも気持ちの端を伝える。
「…それは、オレからも話してみるから…こういうのは早めに金返して、縁切りたいし…」
「そうか…もし会うなら、俺も行く」
縁を切りたいというアキラの言葉に…少し安堵するみずき。
「え?だってお前…」
今日、色々言われてヘコんでたのに…と聞き返してしまう。
「アイツは、苦手だけれど…アキラとアイツを二人きりにする方が…我慢できないから」
少し視線を下げながらも、みずきはアキラが心配で言いきる。
「…みずき、」
アキラは困ったように名前を呼ぶ…
そんなに大切にされるような人間じゃないのに…。
みずきの言葉を聞く度に、そう思ってしまう。
「…オレは、ホントわがままだよな…」
こんなに真っ直ぐに想ってくれてる人がいるのに…
逸らして別れることばかり考えて…
でも、オレの内情に本当にみずきを巻き込みたくないし、怪我もさせたくない。
どうすれば、最良なのか…
全然分からない…
「…アキラ?」
「…みずき、まだ勝手なこと言うけど、一緒に住むために決めたいことがあるんだ…それに納得出来なかったら…一緒には住めないから」
ふっと雰囲気を変えるように、瞳を合わせて言う。
「え…」
アキラは含んだ言い方で…
「できる?」
確認を促す。
「内容を聞かないと…」
みずきも即答はできず、アキラの言葉を待つ…
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