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第106話

「待って、今行くから…」 コウジは、はしゃぐ瞬にため息をついて答えて、みんなを促している。 駐車場から宿までは距離があるのでみんなで歩いて行くのだ。 「わー、すげー!」 ルードは目を輝かせ、桜並木を見て素直に感激して声をだす。 瞬助が指差す方には、直線で50メートルほどの桜並木が見事に咲き揃っていて…都会では見ることが出来ない美しい情景が広がっていた。 「ホント、綺麗だな…天気もいいし、来て良かった」 アキラは、何気に隣を歩くみずきに話し掛けている。 「あぁ、人もいないし…穴場だな、ここは」 柔らかく頷いて答えるみずき。 アキラの様子が気になっていたけれど、長時間のドライブでも元気そうで、とりあえず安心する。 「…こういうまっすぐの道、見てると競争したくなるなー」 ルードは直線の道を見て何気に呟く… 「じゃ、みんなで競争する?桜並木の入口から終わりまで、負けた人は明日の昼メシ代、おごりってことで!」 瞬助はルードの言葉を拾って提案する。 「面白そう!やろうやろう!」 ルードも乗り気で頷く… 「じゃ、みんなここ並んで、最後の桜の木まで走るってコトで…」 「不参加の人もメシ代払ってもらうから全員参加な!」 瞬助とルードがどんどん決めてしまう。 「ちょ、ちょっと…二人とも!」 走れないアキラのこともあるのでコウジが懸念し声をだす… みずきもアキラの反応が気になり様子を伺うが… 「オレ、メシ代払うから不参加でいいよ…」 フツーに断っている。 「えー、なんで!」 ルードが不服そうに声をだす。 「疲れるから、どーせならオレがスターターやってやるよ、ほらみんな位置につけ!」 アキラはそういうと、ひとり、ゴール付近へ歩いていく… そんなアキラを少々面食らったように見ていた瞬助だが、気を取り直して… 「みんな位置につきました?オッケー?」 横一列に、アキラ以外が並んでいる。 成り行きで、コウジもみずきもヨシも参加することになって、とりあえず、負けたくない意地とおごりはイヤなので 真剣に取り組むようだ。 「ルー、俺、一応部活は陸上で短距離走ってたから早いぜ、手加減しないからなー」 「俺だってアンカー走ってたもんねー負けない!」 準備体操をしながら、なんだかお互いに牽制し合う瞬助とルード…

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