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第107話
「おーい、そろそろいいかー?」
アキラが声をかけてくる。
「オッケーです!」
手を振り大きく頷く瞬助。
「よーい、ドンでいい?」
アキラは首を傾げ、もうひとつ質問している。
小学校の運動会しか見たことがないので、可愛いスタートの合図しか知らないアキラ。
「いいっすよー」
瞬助は、にこやかに答える。
アキラは片手をあげて…息を吸い…
「なら…行くよー、……位置について、よーい…ドン!」
アキラの声と共に、一斉に走り出す5人。
みんな負けじと必死だ…
そんなに差は開かず、あっと云う間にゴールへなだれ込む。
「っうそー!?」
「はぁっ負けた!くやしーっ!つーか早っ!」
「マジ…俺が、最後かよ…」
みんな息をつきながら口々に言っている。
「みずき…早、1位おめでとう…」
アキラはすっとみずきに近づき、頬にキスを落としている。
なんと、1位は目立たないみずきだった…
「ありがとう…走るのは好きだから」
それにアキラが見てるから少しはいいところを見せたくて…と、ちょっと照れたようにみずきは笑って云 いう。
「うわー、びっくりした…正直、マークしてない人たちが早かったね、アキラ、はっきりした順位教えて!」
ルードがそう急かす。
「OK、1位みずき、2位幸田クン、3位コウジ、4位ルード、でドベはヨシ!」
「ドベって!わずかな差じゃねーかっ」
そうとう悔しかったのか手をぐーにして怒ってしまうヨシ。
「ははっ確かに近差だったよな…でも俺の勝ちっ!よかった、メシ代払わなくていいから。うーん…みずきも早かったけどコウジも早かったな、抜けなかったもん…」
ルードはコウジと接戦したらしく褒めている。
「くー、1位とるつもりだったのに、マジすげーっす、彼氏さん、くそー、まぁ、コウジに勝ったから…いっか」
「どーいう理屈なのさ…」
瞬助も悔しがっているようだ。
「どべヨシ、金持ってきてんのか?」
アキラがからかうように言う。
「るっせー!払やーいいんだろ!くっそー」
かなり不本意で言い返すヨシ。
「アキラとヨシ仲良く払ってね…」
ルードが笑いながら促してくる。
「仲良くって響き…ヤだな」
案の定、顔をしかめるアキラ…
ヨシも不服そうに頷く…
「さぁさぁ、旅館の方にいきましょーよ!走ったから温泉はいったら気持ちいいっすよ!」
瞬助がさっそく温泉に誘う。
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