111 / 207
第111話
まわりは、面白がって見ている者もいれば、兄弟だし、どう対処していいやらハラハラの者もいたり…
「…ちょ、ふざけすぎ、殴るよアキ兄!」
むー、と怒って言うコウジ。
「はは、ほら行けって…」
アキラは軽く笑ってウインクするようにコウジを促す。
「う…分かった、瞬に近づかないでね…」
お願いします、と念をおしてアキラから離れるコウジ。
「はいはい…」
アキラも頷いて歩き出す。
なんだかんだ言いながら温泉の脱衣場までやってくる一行…
「アキラと風呂入るの久しぶり~、でも変な感じだよね、コウジもアキラも彼氏いるのに一緒に入れるって、彼氏の二人は何も思わないの?」
ルードは服を脱ぎながら何気に聞いている。
「……」
気にならない訳はないけれど…
言葉にできず無言なみずき…
「同性だから仕方ないよなー、ここにはコウジ狙ってる人いないし、まぁコイツは見せびらかすような趣味ないから別に…なぁ?」
答えたのはルードの左隣で服を脱ぐ瞬助、コウジに確認するように笑う。
「当たり前でしょ」
瞬助の隣でツンと答えるコウジ。
「そうだよなー、」
ルードが答えているのを遮り…
「うわ、ルー、背中に肩…何の傷!?」
瞬助が驚いて聞いている。
「はは、汚いだろー、ごめんな」
ルードは笑って答えているが…
「瞬、何でも聞き過ぎ!」
コウジがまたも怒っている。
「いいよ、コウジ、肩のはヤケドで背中のは覚えてないんだ」
「ふーん、すげーな…でも」
すごく感心している瞬助、また会話を続けている。
ルードの右隣のロッカーを使っているのはヨシヤス、その隣にいるみずきに機嫌よく話し掛けながら服を脱いでいる。
アキラはみずきの隣でコウジとは反対側の端のロッカーを使ってみずきとヨシの会話を聞きながら服を脱ぎはじめる。
何気にみずきが腕時計を外してロッカーに置くのが見えたアキラ…
みずきはヨシと話しているので…
そっと気付かれないようにその時計を手に取る。
銀の腕時計…
何年か前に自分があげたもの…まだ大切に持ってる。
この先、別れたとき…みずきは、この時計みてオレのこと思い出すんだろうか…
(…今、これ無くなったら…どんな反応するんだろう…)
みずきの腕時計を見つめ…ふと、そんなことを想うアキラ。
ともだちにシェアしよう!