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第111話

まわりは、面白がって見ている者もいれば、兄弟だし、どう対処していいやらハラハラの者もいたり… 「…ちょ、ふざけすぎ、殴るよアキ兄!」 むー、と怒って言うコウジ。 「はは、ほら行けって…」 アキラは軽く笑ってウインクするようにコウジを促す。 「う…分かった、瞬に近づかないでね…」 お願いします、と念をおしてアキラから離れるコウジ。 「はいはい…」 アキラも頷いて歩き出す。 なんだかんだ言いながら温泉の脱衣場までやってくる一行… 「アキラと風呂入るの久しぶり~、でも変な感じだよね、コウジもアキラも彼氏いるのに一緒に入れるって、彼氏の二人は何も思わないの?」 ルードは服を脱ぎながら何気に聞いている。 「……」 気にならない訳はないけれど… 言葉にできず無言なみずき… 「同性だから仕方ないよなー、ここにはコウジ狙ってる人いないし、まぁコイツは見せびらかすような趣味ないから別に…なぁ?」 答えたのはルードの左隣で服を脱ぐ瞬助、コウジに確認するように笑う。 「当たり前でしょ」 瞬助の隣でツンと答えるコウジ。 「そうだよなー、」 ルードが答えているのを遮り… 「うわ、ルー、背中に肩…何の傷!?」 瞬助が驚いて聞いている。 「はは、汚いだろー、ごめんな」 ルードは笑って答えているが… 「瞬、何でも聞き過ぎ!」 コウジがまたも怒っている。 「いいよ、コウジ、肩のはヤケドで背中のは覚えてないんだ」 「ふーん、すげーな…でも」 すごく感心している瞬助、また会話を続けている。 ルードの右隣のロッカーを使っているのはヨシヤス、その隣にいるみずきに機嫌よく話し掛けながら服を脱いでいる。 アキラはみずきの隣でコウジとは反対側の端のロッカーを使ってみずきとヨシの会話を聞きながら服を脱ぎはじめる。 何気にみずきが腕時計を外してロッカーに置くのが見えたアキラ… みずきはヨシと話しているので… そっと気付かれないようにその時計を手に取る。 銀の腕時計… 何年か前に自分があげたもの…まだ大切に持ってる。 この先、別れたとき…みずきは、この時計みてオレのこと思い出すんだろうか… (…今、これ無くなったら…どんな反応するんだろう…) みずきの腕時計を見つめ…ふと、そんなことを想うアキラ。

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