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第112話

「アキラ?どうした?」 不意にアキラの様子を見たみずきが気付いて、うかがうように話し掛ける。 「ん、別に…この時計、もういらないかなって思って…」 「なぜ?いるよ」 アキラの言葉にはっきり答えるみずき。 「時間はケータイ見ればわかるし…必要ないよな」 「いや、普段、時間は腕時計で確認しているし…携帯電話とは違うよ、なぜそんなことを思ったのか分からないけれど、これは大切なものだから必要なんだ」 アキラに貰ったプレゼントだから。 前にも言ったことはあるけれど…と、みずきは優しくアキラに伝え腕時計を返してもらう。 「……」 無言なアキラを見て… 「え…と、アキラも腕時計が欲しいのか?」 アキラの言葉の理由をみずきなりに考えてみて、そう聞いてみる。 「…そうじゃないけど」 「そうか…」 何だろう…そう首を傾げるみずき。 そこへ早々と服を脱いで、タオルを腰に巻いたルードが呼びかけてくる。 「アキラ、みずき、早くしろよー、先行ってるからなー」 「すまない、すぐ行くから…」 みずきの答えを聞いて… 「おっけー!」 ルードはわくわくした様子でヨシをお供にさっそうと露天風呂へ行っている。 「さ、みんな行ったようだし…アキラも…」 「はいはい、分かった」 みずきの言葉に軽く頷いて、素早く服を脱ぎ始めるアキラ。 それを見てやはりあたふたと視線を外してしまうみずき。 「…みずき、いい加減、慣れたら~?」 そんな様子をすかさず笑ってからかうアキラ。 「え…いや、人の着替えは…凝視するものじゃないし…」 またあたふたと理由を考えるみずきが面白くて… 「…そんな、あからさまに目、逸らさなくても、心外だな」 ついからかいたくなるアキラ… ツンとしたように言ってみる。 「え…と、そうか…すまない…」 みずきは弱ったように首をかしげ…やはり謝ってしまう。 「ふ、冗談だって…面白いやつ…さ、行こ行こ…」 アキラは髪をくくり上げながら微笑む… 「あぁ…」 そんな可愛いらしい表情にも、どきどきしてしまうみずきだが…心を落ち着けて、優しく頷く。

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